- 著者
-
河東 泰之
- 出版者
- 東京大学
- 雑誌
- 重点領域研究
- 巻号頁・発行日
- 1994
作用素環論と,共形場理論,量子3次元トポロジーなどとの関連のうち,本年度は,quantum doubleとの関連,およびorbifold constructionの関数解析的側面について研究を行った.Drinfel′dの創始した,quantum doubleと呼ばれる構成法は,量子群の理論において基本的なものである.これは,Hopf algebraに対して適用されるが,Ocneanuは,彼が1987年に導入した,asymptotic inclusionという構成が,(有限次元Hopf algebraの拡張である)paragroupniに対するquantum double constructionと見なせるということを主張した.彼は例によって論文を書かなかったので,この主張の正確な意味と証明について,彼の講演に基づいてEvansと共同研究し,その成果を論文とした.3次元位相的量子場の理論との関連もそこに書かれている.次に,私とEvansが創始したsubfactor理論におけるorbifold constructionに現れるflatnessのobstructionについて研究した.これについては,最初私の1990年の代数的研究があり,その後Xuによって,共形場理論における共形次元との関連がわかっていた.私は,今度これを作用素環論における伝統的な超積の方法と組み合せ,Jonesが1980年に導入したκ不変量の相対比との関係を明らかにした.すなわち,最も典型的なWenzl seriesと呼ばれるsubfactorの場合orbifold constructionにおけるflatnessのobstructionが消えることと,もとのsubfactorno相対κ不変量が消えることが同値になるのである.これには,私が1992年に導入した相対Connes不変量χを用いる.さらに,相対Jones不変量κの一般論も研究した.