著者
河瀬 直幹 夏原 由博
出版者
日本環境動物昆虫学会
雑誌
環動昆 (ISSN:09154698)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.123-131, 2007-09-07
被引用文献数
1

大阪府堺市周辺の約80km^2において,アオヤンマの生息状況について調査した.空中写真を利用し,生息場所となるヨシ等の高茎抽水植物帯がある池沼を把握した後,野外調査による成虫の確認調査を実施した.その結果,19ヵ所の潜在生息場所が把握され,そのうち10ヵ所で成虫を確認したが,繁殖場所と推定できる場所は3ヵ所に限定された.また,3ヵ所の繁殖場所ではヨシ群落が最優占し,ヨシ以外の抽水植物群落も存在した.さらに,3ヵ所の繁殖場所から7ヵ所の確認場所に移動したと考えると,成虫は平均2,260±841mを移動すると推察できた.ただし,有効分散は3ヵ所の繁殖場所問の移動に限られるため,調査範囲内のアオヤンマの個体群ネットワークは非常に厳しい状況にあると思われた.アオヤンマを地域的に保全するには,繁殖場所問の距離が2,260±841mの範囲内でネットワークされた保全計画が重要と考えられた.