著者
河西 秀夫
出版者
日本情報地質学会
雑誌
情報地質 (ISSN:0388502X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.109-120, 2012-09-25 (Released:2012-10-31)
参考文献数
9
被引用文献数
4

露頭データベースの作成には層序と露頭構造の数学的表現が必要である.露頭構造と層序の数学的表現方法としてグラフ理論と二項関係を使用した構造グラフと層序グラフを提案し,両者の理論的背景を検討した.地層の逆転ががなく,断層による切断や火成岩の貫入もない地層群だけで構成される地質構造を対象とした.単層 x が空間的に y の下側にあるという単層間の空間的位置関係を示す二項関係xRy を使用して露頭構造を表現すると,この関係はラベル付き有向グラフで表現できる.このグラフG =(V, R)を構造グラフとよぶ.V は露頭を構成する単層の集合である.層序は単層の堆積順序を表すものなので,単層の形成順序を意味する二項関係xU *y を使用して表現した.U * は空間的な上下関係を意味する二項関係xRy の反射的かつ推移的閉包であり,S =(V, U * )で定義される有向グラフを層序グラフとよぶ.層序は二項関係viU*vj で表現される.この手法により,露頭構造と層序の違いが数学的に表現できる.露頭で観察される新旧関係は半順序であり,必ずしも全順序になるとは限らない.複数の露頭で観察される構造からある範囲の地域の層序を組み立てることは露頭層序グラフの演算を意味する.
著者
田中 収 河西 秀夫
出版者
Japan Society of Engineering Geology
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.101-108, 1982-06-30 (Released:2010-06-04)

In August, 1981, many collapses occurred in Yamanashi Pref. owing to Typhoon 15. In this report, the types and features of collapses are described from a geological point of view, based on the field investigationtionsat the stricken areas (South Alps Super Drag Road, Norogawa Drag Road, Sakeishi Drag Road, and Magi Drag Road).The results obtained from these investigations are as follows:(1) The types and features of collapses are decided by the lithic characters.(2) In case of Masa (weathered Granite) and Talus deposit, collapses are generally occurred at the head of1st order valleys or within O-order valleys, and the debris frequently run down valleys in the form ofmud-flow. In the former case the types of the collapse are mostly circular slide, and in the latter, mostcollapses are of the type that slide along the surface of the bedrocks.(3) In case of lutaceous rocks, the collapses are generally occurred at the fracture zones, and concequently, their breaking points have nothing to do with valley order.
著者
河西 秀夫
出版者
日本情報地質学会
雑誌
情報地質 (ISSN:0388502X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.57-68, 2005-06-25
被引用文献数
10

層序式は2つの地層の接触関係を(下位の地層単元)(関係単元)(上位の地層単元)の形で表現するものであるが, この式では1つの地層が複数の地層に接触する場合は表現できない.また, 層序グラフは露頭の構造を図で表現するものであるが, このままではデータベースに使用できない.このため, 行列を使用して数式で表現する必要がある.これらの問題を解決するために, 著者は層序式に新しい記号である(), {}, [), (]の導入と構造行列の導入を提案した.新しい記号()及び{}, [), (]は次のように定義される.(L_1##_1L_2##_2…##_<n-2>L_<n-1>)##_<n-1>L_n ⇔ L_1##_<n-1>L_n, L_2##_<n-1>L_n, …, L_<n-1>##_<n-1>L_n, L_1##_1L_2##_2…##_<n-2>L_<n-1> L_1##_1(L_2##_2L_3…L_<n-1>##_<n-1>L_m)⇔ L_1##_1L_2, L_1##_1L_3, …, L_1##_1L_n, L_2##_2L_3…L_<n-1>##_<n-1>L_n {(L_1##_1L_2##_2L_3…##_<n-3>L_<n-2>)##_<n-2>L_<n-1>} ##_<n-1>L_n ⇔{L_1##_1L_2##_2L_3…##_<n-3>L_<n-2>, L_1##_<n-2>L_<n-1>, L_2##_<n-2>L_<n-1>, …, L_<n-3>##_<n-2>L_<n-1>} ##_<n-1>L_n ⇔(L_1##_1L_2##_2L_3…##_<n-3>L_<n-2>)##_<n-1>L_n, (L_1##_<n-2>L_<n-1>)##_<n-1>L_n, (L_2##_<n-2>L_<n-1>)##_<n-1>L_n, …, (L_n##_<n-2>L_<n-1>)##_<n-1>L_n L_1##_1 [L_2##_2L_3…##_<n-2>L_<n-1>)##_<n-1>L_n ⇔L_1##_1L_2##_2L_3…##_<n-2>L_<n-1>, L_2##_<n-1>L_n, L_3##_<n-1>L_n, …, L_<m-1>##_<n-1>L_n ⇔L_1##_1L_2##_2L_3…##_<n-2>L_<n-1>##_<n-1>L_n, L_2##_<n-1>L_n, L_3##_<n-1>L_n, …, L_<n-2>##_<n-2>L_n L_1##_1(L_2##_2L_3…##_<n-2>L_<n-1>]##_<n-1>L_n ⇔L_2##_2L_3…##_<n-2>L_<n-1>##_<n-1>L_n, L_1##_1L_2, L_1##_1L_3, …, L_1##_3L_<n-1> ⇔L_1##_<11>L_2##_2L_3…##_<n-2>L_<n-1>##_<n-1>L_n, L_1##_1L_3, …, L_1##_1L_<n-1> L_1, …, L_pは地層であり, ##_iは関係単元である.層序式に()及び[), (]を使用すると, 1つの地層に複数の地層が接触する場合の層序を明確に記述できる.構造行列A=[a_<ij>]は層序グラフを式化したものである.下位の地層L_iと上位の地層L_jが直接接している場合a_<ij>の元はL_iとL_jの接触関係の記号であり, 他の場合は0である.露頭構造行列とA[a_<ij>]とB[b_<ij>]から, C[c_<ij>]=A[a_<ij>]※B[b_<ij>]の演算を行い地域構造行列C[a_<ij>]を組み立てることができる.著者はこのアルゴリズムを提案した.
著者
河西 秀夫
出版者
日本情報地質学会
雑誌
情報地質 (ISSN:0388502X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.161-175, 2010 (Released:2010-10-13)
参考文献数
5
被引用文献数
1 1

Google Earthは衛星写真を使用した3次元地形表示ソフトであり,ユーザーによりデータの登録が可能なことから,簡易なGISソフトとして使用できる. データの登録はダイアログボックスを使用する方法とKMLを使用してドキュメントを記述する方法があるが,KMLにはダイアログボックスでは登録できない機能が多数存在する.ダイアログボックスで登録したデータはKMLドキュメントとして保存される.このKMLドキュメントを追加・修正していくと便利である.第2回では線と領域の表示,図面の貼付けについて,実例に即してダイアログボックスによる登録方法とその結果作成されるKMLドキュメントの読み方と修正方法を解説する.立体表示を行うと,断層などの登録データ地形との関係が直感的に理解できるという利点がある.また,図面を貼り付けると図面に高さ情報を付加することができるので,新たな情報を得ることが可能になる.
著者
河西 秀夫
出版者
一般社団法人日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.84-92, 1994-08-10
参考文献数
12
被引用文献数
1

15〜25KHzの周波数(VLF帯)の電磁波を用いて地表の電磁場応答を測定する電磁波探査がVLF-MT(Very Low Frequency-Magneto Telluric)法である。 Magneto Telluricは地磁気地電流法と訳されている。VLF帯の電磁波として米軍の送信所から発信される対潜水艦用の通信電波が使用されている。VLF-MT法では水平磁場強度とそれに直交する水平電場強度が測定され、これらの値から次式で見かけ比抵抗と位相角が求まる^1)。ρ_2=0.2T(E/H)^2(1)φ=arg(E/H)(2)ρ_2:見かけ比抵抗値(Ωm)φ:位相角(^)T:周期(秒)E:電場強度(mV/km)H:磁場強度(nT)地中に入射した電磁波の強度が1/e(eは自然対数の底)に減衰する深度を表皮深度δというが、この表皮深度をほぼ探査深度と見なすことができる。比抵抗ρの均質大地の表皮深度は次の式で求まる^2)。δ=500√<p/f>(3)ρ:比抵抗値(Ωm)f:測定周波数(Hz)比抵抗値として見かけ比抵抗値を使用して計算するが、見かけ比抵抗値が500Ωmの場合は表皮深度は35m、1000Ωmの場合は120mである。このようにVLF-MT法は探査深度が浅いが、装置が小型で軽量なことや短時間で測定ができることから、露頭が少ない火山地域の浅都の地質構造を推定する手段として有効であると思われる。筆者は先に富士山北麓の地域(山梨県鳴沢村)のテフラ堆積地帯でVLF-MT法を用いて浅都の地質構造を推定し、その有効性を報告した^3)。この報告では地盤は2層構造であるという仮定下で測定データの数値解析を行なったが、既存のボーリング資料の対比から、400Ωm以下の比抵抗層を火山砂礫層、401〜800Ωmの比抵抗層を凝灰角礫層、1200Ωm以上の比抵抗層は溶岩流と凝灰角礫層の互層、2000〜5000Ωmの比抵抗層を溶岩流であると推定した。また、地質構造の解析に当って、あらかじめ踏査やボーリング資料等の既存資料を使用してできる限り地質構造を検討しておく必要があることを指摘した。今回、前回の方法の有効性をさらに確認するために、富士山北麓地域と両様に富士山の噴出物が厚く堆積している富士山北西麓地域(山梨県富士吉田市)でVLF-MT法を用いて浅都の地質構造の調査を行い、2層構造の仮定下で測定データの数値解析を行った。また、VLF-MT調査とともに地質踏査を行い、解析を行うために必要な地質構造の把握を行った。本文では解析結果を報告するとともに、幾つかの問題点を検討する。