著者
井上 仁 箕輪 良行 河野 正樹 崎原 永作 立花 一幸 沼田 克雄
出版者
Japanese Association for Acute Medicine
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.32-41, 1994-02-15 (Released:2009-03-27)
参考文献数
23
被引用文献数
1

本研究は,ヘリコプターなどによる救急患者搬送の諸問題に関して,搬送を要請する側の離島に勤務する現地医師の立場からの意見を,アンケート調査により集約し検討したものであり,この種の研究としては本邦ではじめてのものである。対象は,北海道,東京,島根,長崎,鹿児島,沖縄の6地域の遠隔離島などに在任中または勤務経験をもつ医師200人とし,記名による回答を94人(47.0%)から得た。収容病院の特徴としては,十分なコミュニケーションが可能な病院(68.1%),臨床研修を受けた病院(33.0%)が多くみられた。北海道や長崎の離島では,明確に規定された搬送要請基準が回答された。なかでも長崎では,極小未熟児分娩の予想される母体,先天性心疾患で緊急手術を必要とする症例など,適応疾患5項目を具体的にあげていた。2名以下の医師が勤務する東京,鹿児島,沖縄の小離島では,スタッフや施設機能の不十分に起因する要請が多く,診断がつかない場合や,長期入院を要する場合にも搬送要請の基準としている回答が多い傾向があった。要請から搬送までの問題点としては夜間,荒天時搬送機能の確保充実を求める回答が59.6%と最も多く,搬送時間短縮のために基幹病院ヘリポートの設置を求める意見が多くみられた。医師の添乗義務については,全例に必要と,重症のみ必要が同数であった(43.6%)。添乗医の確保ができず,要請を撤回することもある現状が9回答報告された。また,添乗医の安全性確保を現地医師の75.5%が強調していた。現状では搬送中機内での医療行為がほとんど不可能であることから,医師添乗を義務づけるならば医療行為可能な搬送専用ヘリコプターの導入が望まれる。問題点のある搬送76例,搬送を考えたが最終的には搬送しなかった37例が報告された。このなかで気象条件,患者の容態,要請手続きなどに関して具体的に問題点が指摘された。