著者
櫃本 竜郎 井上 勝次 飯尾 千春子 藤本 香織 河野 珠美 藤井 昭 上谷 晃由 永井 啓行 西村 和久 鈴木 純 大蔵 隆文 檜垣 實男 大木元 明義
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.57-63, 2015 (Released:2016-01-14)
参考文献数
7

症例は72歳, 女性. 当院膠原病内科で全身性エリテマトーデスに合併した血球貪食症候群に対して化学療法 (CHOP療法) を施行後に心不全を発症しアドリアマイシン心筋症と診断された. また, 心エコー上中等度の大動脈弁狭窄症を指摘された. 以後心不全標準治療を継続したが, 約10年の経過で徐々に心機能低下と大動脈弁狭窄症の重症度が進行し, 心不全の増悪による入退院を繰り返した. 内科的治療の限界と判断し, 外科的大動脈弁置換術や経カテーテル的大動脈弁植込み術 (Transcatheter Aortic Valve Implantation ; TAVI) の適応を診断するため, 低用量ドブタミン負荷心エコー検査を行った. 本症例は偽性重症大動脈弁狭窄症の可能性があるため, Blaisらが提唱した予測有効大動脈弁口面積 (projected effective orifice area ; EOAproj) 測定したところ, EOAproj 1.18cm2で境界所見であった. 胸部CT検査から求めた大動脈弁石灰指数 (Agatston's score) は659であり, 強い石灰化は指摘できなかった. カテコラミンを含む心不全治療を行ったが, 心不全の改善を認めず死亡した. 剖検を行った結果, 大動脈弁は弁腹の石灰化を認めたが, 弁尖の変性は軽度であった. 今回われわれは低左心機能を伴う大動脈弁狭窄症例におけるドブタミン負荷心エコー検査の有用性, 限界について検討したので報告する.