著者
大西 久仁彦 岩間 章介 飯田 真司 後藤 信昭 隆 元英 河野 邦彦 三島 昭彦 野村 文夫 木村 邦夫 武者 広隆 小藤田 和郎 奥田 邦雄
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.21, no.12, pp.1647-1654, 1980-12-25 (Released:2009-05-26)
参考文献数
27
被引用文献数
2 1

158名の肝硬変症と79名の原発性肝細胞癌患者を血清中HBs抗原の存否,日本酒1日1合以上10年間以上の飲酒歴の有無によりI群:HBsAg(+),飲酒歴(-),II群:HBsAg(+),飲酒歴(+),II群:HBsAg(-),飲酒歴(-),IV群:HBsAg(-),飲酒歴(+)の4群に分け,それら患者の診断確定時の年齢を比較した.肝硬変に関しては飲酒歴を有するII群,IV群の年齢が飲酒歴のないI群,III群に比して共に8歳若く,II群の年齢が39歳で一番若かった.又1日日本酒にして1合以上の飲酒歴のある者では飲酒量の程度は肝硬変の診断時期の年齢に影響せず,1日1合以上3合未満の飲酒でも肝硬変と診断される時期は有意に早かった.原発性肝細胞癌については,HBs抗原保有者において,1日1合以上の飲酒歴がある患者ではその原発性肝細胞癌としての診断確定時の年齢は有意に9年若かった.HBs抗原陰性の者において,1日5合以上の飲酒歴がある患者では,原発性肝細胞癌としての診断確定時の年齢は飲酒歴のない者に比して有意に9年若かった.以上の結果から,長期間にわたる飲酒は肝硬変の進展の重要な促進因子の1つとなっている可能性が考えられる.又原発性肝細胞癌の発生に関しても,長期間の飲酒が1つの促進因子となっている可能性があり,HBs抗原保有者においては軽度の飲酒(1日1合以上3合未満)もつつしむべきである.又HBs抗原陰性者においては大量の飲酒(1日5合以上)をひかえるべきである.