著者
鈴木 光二 岩間 章介 鈴木 直人 武者 広隆 小藤田 和郎 奥田 邦雄
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.77, no.10, pp.1581-1588, 1980-10-05 (Released:2007-12-26)
参考文献数
34

大腸菌に対する抗体(大腸菌抗体)を急性肝炎,慢性肝炎,肝硬変症(代償性)患者の血清について赤血球凝集反応を用いて検索したところ,肝硬変症では他疾患と比べて有意に高い出現率を示した.大腸菌抗体陽性の肝硬変症では陰性例に比べて血清γグロブリン値,IgA値は高値を示し,IgGも高い傾向であつた.肝硬変症で,ICG 15分血中停滞率と血清γグロブリン,19G, IgA値が良く相関した.大腸菌抗体は腸管由来の抗原に対する抗体であることを考慮すると,上記の結果は肝硬変症では腸管由来の抗原に対する抗体の産生が促進し,それが高グロブリン血症の成因の1つになつていることを示唆している.肝硬変症では肝内血流異常の為に腸管由来の抗原物質の処理不活化が低下していると考えられる.
著者
上田 英雄 奥村 英正 堀口 正晴 浪久 利彦 斧田 大公望 岩村 健一郎 上野 幸久 奥田 邦雄 大森 亮雅 小林 節雄 酒井 和夫 滝野 辰郎 土屋 雅春 橋本 修治 広重 嘉一郎 矢野 幹夫 山本 繁
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.162-171, 1974-03-25 (Released:2009-05-26)
参考文献数
7
被引用文献数
2 2

冷蔵人胎盤の加水分解によるCE14(ラエンネック(L))は各種アミノ酸を含んでおり,その作用として,抗脂肝作用,組織呼吸の促進効果,肝再生の促進などが,実験的研究から知られている.今回の研究は,本剤が慢性肝疾患の治療に有効な薬剤かどうかを知ることであった.患者を二重盲検により,2群にランダムに分けた.Placeboとしては生理的食塩水を用いた.第I群は,L注射を2週間受けた後,Placeboを2週間受け,この方法をもう一度くり返した.第II群は,始めPlacebo注射を2週間受け,つぎの2週はLの注射を毎日受けた.その後は第I群と同様にもう一度くり返した.肝機能検査を2週毎に行なって,その前と2週後の値を比較した.両群とも,GOT, GPTはL投与期間で下降し,それは統計的に有意であった.これに比して,両群のPlacebo期間におけるGOT, GPTの下降は有意ではなかった.以上より,Lは慢性肝疾患患者に効果があるといえよう.
著者
大西 久仁彦 岩間 章介 飯田 真司 後藤 信昭 隆 元英 河野 邦彦 三島 昭彦 野村 文夫 木村 邦夫 武者 広隆 小藤田 和郎 奥田 邦雄
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.21, no.12, pp.1647-1654, 1980-12-25 (Released:2009-05-26)
参考文献数
27
被引用文献数
2 1

158名の肝硬変症と79名の原発性肝細胞癌患者を血清中HBs抗原の存否,日本酒1日1合以上10年間以上の飲酒歴の有無によりI群:HBsAg(+),飲酒歴(-),II群:HBsAg(+),飲酒歴(+),II群:HBsAg(-),飲酒歴(-),IV群:HBsAg(-),飲酒歴(+)の4群に分け,それら患者の診断確定時の年齢を比較した.肝硬変に関しては飲酒歴を有するII群,IV群の年齢が飲酒歴のないI群,III群に比して共に8歳若く,II群の年齢が39歳で一番若かった.又1日日本酒にして1合以上の飲酒歴のある者では飲酒量の程度は肝硬変の診断時期の年齢に影響せず,1日1合以上3合未満の飲酒でも肝硬変と診断される時期は有意に早かった.原発性肝細胞癌については,HBs抗原保有者において,1日1合以上の飲酒歴がある患者ではその原発性肝細胞癌としての診断確定時の年齢は有意に9年若かった.HBs抗原陰性の者において,1日5合以上の飲酒歴がある患者では,原発性肝細胞癌としての診断確定時の年齢は飲酒歴のない者に比して有意に9年若かった.以上の結果から,長期間にわたる飲酒は肝硬変の進展の重要な促進因子の1つとなっている可能性が考えられる.又原発性肝細胞癌の発生に関しても,長期間の飲酒が1つの促進因子となっている可能性があり,HBs抗原保有者においては軽度の飲酒(1日1合以上3合未満)もつつしむべきである.又HBs抗原陰性者においては大量の飲酒(1日5合以上)をひかえるべきである.
著者
藤原 葉子 大塚 惠 渭原 博 伊藤 信吾 藤崎 誠 猪俣 美智子 苫米地 幸之助 小高 要 五十嵐 脩 奥田 邦雄 美濃 眞 千畑 一郎 橋詰 直孝 糸川 嘉則
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.41-44, 2001-02-10 (Released:2009-12-10)
参考文献数
4
被引用文献数
3 3

ビタミンC測定法, および血中の総ビタミンC値の基準値 (参考値) を検討した。健康な女子大生ボランティア54人に, 3日間の食事調査の後, 採血し, ビタミンCを1日200mg含む一定の試験食を3日間供した。3日後に再び採血を行い, 得られた血漿のビタミンC濃度を測定した。測定は3カ所の施設でHPLC法 (お茶の水女子大学, テイジンエスアールラボ) およびアスコルビン酸オキシダーゼ法 (東邦大学) を用いて行い, 各施設での測定値の比較も行った。総ビタミンC濃度の試験食摂取前値と後値では平均値に有意な差はみられないが, 後値ではばらつき (標準偏差) が小さくなり, ビタミンCの一定量摂取が, 血中濃度に影響を与えることが示唆された。前値でビタミンC濃度が低値にあった学生では, ビタミンCを1日200mg, 3日間摂取することで, 血中濃度は0.62mg/dL以上の範囲に入った。異なる測定方法による施設間差は認められず, 従って, 統計的に95%の信頼範囲から血中総ビタミンC濃度の基準値は0.70-1.38mg/dL (HPLC/ECD法) となった。この値は栄養所要量算出の際に基準とした値 (0.7mg/dL)とも一致した。
著者
都田 梅司 谷川 久一 奥田 邦雄
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.547-550, 1971-06-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
10

47才の男性.狩猟にて捕獲した野兎を生食し, 2日後に発熱,頚部リンパ節の腫大を来たし,野兎病の疑いで入院.理学的所見では,両側頚部リンパ節腫大,口蓋扁桃軽度腫大を認め,他に著変なく,検査で白血球増多を認めた他は著変がなかつた.リンパ節の組織所見は好中球の浸潤強く,小膿瘍形成を示した.血清凝集反応で, Francisella turalensis陰性, Brucella陰性,Pasteurella multocida陽性で,凝集価は経日的に上昇した.また患者の長男も同様に生肉を食したが,臨床症状の発現はなく,血清凝集反応のみが陽性で,不顕性感染と思われる. a. b. penicillin投与により約1週間で発熱下降,約2日でリンパ節は縮小し,白血球増多も消失した.ヒトにおけるPasteurella multocida感染の報告は外国では今日まで138例あるが,本邦では最初と考えられる.