- 著者
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油井 信弘
- 出版者
- 岩手大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2008
本研究では、PP2C機能研究のためのPP2C阻害剤と活性化剤を提供することと、その分子メカニズムを明らかにし、真核細胞におけるPP2Cの機能を解明することを目的とした。昨年度ではPP2Cを活性化するPisiferdiol(1)と阻害するSanguinarine(2)を見出し、そのin vitroにおける各種ホスファターゼに対する作用とHL60細胞に対するアポトーシス誘導活性を調べたが、今年度では、それらを論文としてまとめるとともに、1のカルシウムシグナル伝達に関わる遺伝子変異酵母(zds1 Δerg3Δpdr1/3Δ)に対する生育円活性について調べた。1は、0.3M CaCl_2を含むYPD培地での遺伝子変異酵母株に対してCa^<2+>依存的、濃度依存的に生育円活性を示した(0,5μg/disc,11.0mm)。また、FACS解析により、1のCa^<2+>によるG_2期遅延の抑圧が観察された。さらに、cnb1Δ株とmpk1Δ株に対する合成致死作用でmpk1Δに特異的に作用し、WT株に対するLi感受性の増大を示すことから、カルシニューリン経路に作用することが示唆されたが、直接の酵素阻害は300μMでも認められなかった。そこで、遺伝子変異酵母株におけるCa^<2+>シグナル伝達に関わるタンパク質のリン酸化状態と発現を調べたところ、1は0.1M CaCl_2によって亢進されたリン酸化Cdc28を脱リン酸化すると同時に、Cdc28pのチロシンキナーゼSwelpとカルシニューリンCnblpの減少を引き起こした。これまでに、酵母のPP2CホモログPtc1の抑制がカルシニューリンの活性化に関わると推定されており、1は遺伝子変異酵母株においてPP2Cを活性化させることで、カルシニューリンを抑制することが示唆される。