著者
小泉 千尋
出版者
日本質的心理学会
雑誌
質的心理学研究 (ISSN:24357065)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.161-175, 2019 (Released:2021-04-12)

近年,科学技術を巡って専門家と市民の対話の重要性が高まっている。本研究は,そうした対話の場の一つであるサイエンスカフェをフィールドとし,話題提供者と呼ばれる専門家が一般参加者の「科学知では答えられない/答えにくい問い」にどのように対処するのかを検討した。その結果,話題提供者は科学知において答えられる範囲については科学知フレームで応答し,答えられない/答えにくい範囲については社会的議論フレームへと移行した。ところが,社会的議論フレームへの移行が参加者とのコンフリクトを生じさせると,ファシリテーターの介入を契機として,個人見解フレームへと移行していた。こうした話題提供者のフレームシフトは,参加者との対立を回避し,コミュニケーションを継続するためのストラテジーであるといえる。この結果から,話題提供者がフレームシフトを用いて自らのメンバーシップを「話題提供者」から「一参加者」としてその場に参加していた可能性を示唆した。
著者
泉 千尋 藤森 一真 金森 貴洋 桑原 洋平 西谷 彰紘 鈴木 学 菅原 誠一 太田 真之 佐藤 宏行 林 健太郎
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.173-182, 2021-12-23 (Released:2021-12-24)
参考文献数
11

心房性頻脈性不整脈(AT/AF)のburdenを減少させる機能として,第2世代心房抗頻拍ペーシング(A-ATP)の有用性が報告されているが,導入後に治療が有効となる症例の特徴は明らかでない.そこでわれわれは,A-ATP(Reactive ATP, メドトロニック社製)作動症例22名の患者背景,心内心電図,12誘導心電図,エコー所見,BNPから治療が有効となる因子を検討した.AT/AF burdenの50%以上減少をA-ATP有効と定義し, AT/AF burden<5%の症例とAT/AFのエピソードが1件のみの症例は治療有効性の判断が困難なため,10名を除外した.有効群(5名)は無効群(7名)と比較して,心内AT/AF average tachycardia cycle length(AvCL)>300ms(28.6% vs 5.2%,p<0.05)および規則的なAT/AF(71.9% vs 48.5%,p<0.05)が多く,AT/AFに対するカテーテルアブレーション(CA)またはMaze手術既往が多かった(80% vs 14%,p<0.02).また,12誘導心電図において有効群はf波のCLが無効群より延長していた(220.5ms vs 141.4ms,p<0.05).A-ATPは延長したAT/AF AvCL,または規則的なAT/AF症例で有効であり,CAやMaze手術の既往,12誘導心電図のf波CL延長が植込み前に観察可能な有効性の予測因子として有用な可能性がある.