著者
泉 孝一
出版者
宮崎大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

{目的}これまでに動物実験施設バリア区域での履物の微生物統御を安価で簡便に行う方法として光触媒酸化チタンを塗布したプレート(以下酸化チタン板とする)の下駄箱内の滅菌効果について検討してきた。その結果1)酸化チタン板の滅菌効果は照度に依存し、節電のため消灯している廊下では十分な効果が得られない事、2)板面の照度は、自然光や照明の条件に複雑に影響を受ける事が解った。そこで光の条件を制御して基礎データを集積し微生物統御の効果を客観的に検討することで、酸化チタン板の有効利用のための基本的な情報を獲得する事とした。{材料及び方法}照度が制御できる遮光箱を作成し、酸化チタン板に165〜15Lxの光を1週間照射し初日と1週間後の板面の一般細菌及び真菌の数の変化を計測する。測定は一般細菌用としてSCDLP寒天培地(日水製薬)を又、真菌にCP加サブロー寒天培地(日水製薬)を使用する。{結果及び考察}遮光箱を用いた1週間の試験の結果、酸化チタン板と光触媒酸化チタンを塗布してないプレート上の細菌数の増減で比較すると、一般細菌数は165Lxでは大差は見られなかった。80Lxでは酸化チタン板の方が塗布無しプレートより71.3%の減少、65Lxでは9%の減少、35Lxでは逆に25.4%の増加、15Lxでは77.4%の増加がそれぞれ記録された。一方、真菌数は165Lxでは酸化チタン板が塗布無しプレートより71.6%の減少が見られた。80Lxでは48.7%減少が見られた。65Lxでは44.6%の増加、35Lxでは21.2%の減少、15Lxでは逆に136.3%の増加がそれぞれ記録された。以上の結果から、1週間電球光を当て続けた場合、一般細菌は65Lx以上、真菌は35Lx以上で光触媒酸化チタンの効果が現れる事が解った。よって人工照明下では一般細菌、真菌の両方に酸化チタンによる滅菌の効果を得るためには65Lx以上の照度が必要であると判断した。