著者
長岡 敦子 國井 泰人 日野 瑞城 泉 竜太 宍戸 理紗 齊ノ内 信 柿田 明美 矢部 博興
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.186, 2021 (Released:2021-12-25)
参考文献数
16

機能分子であるタンパク質の脳における発現解析は,統合失調症の分子病態を解明するうえで不可欠である。死後脳研究には病態以外のさまざまな条件に由来する交絡因子が存在するため,その評価とコントロールは重要である。筆者らは統合失調症死後脳におけるタンパク質発現を中間表現型として,遺伝子多型(SNPs)との関連を解析する研究を行っており,解析には当施設で保管する精神疾患を主とした死後脳と新潟脳研究所に保管されている非精神疾患対照の死後脳を用いて行っている。本稿では,死後脳試料の保管施設の違いという交絡因子によって生じるタンパク質発現への影響について検討した研究と,統合失調症患者死後脳におけるタンパク質発現解析の一例として,aldehyde dehydrogenase 4 family member A1(ALDH4A1)とその発現に影響するSNPsについての研究を取り上げて,それぞれ概説する。
著者
國井 泰人 長岡 敦子 日野 瑞城 泉 竜太 宍戸 理紗 矢部 博興
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.179-185, 2021 (Released:2021-12-25)
参考文献数
23

多彩な方向から活発に行われている生物学的研究によって,精神疾患の病態解明は急速に進んでおり,これらの研究で得られた知見を検証するための死後脳研究も最近数多く行われるようになっている。こうした死後脳研究のためには,研究に適した脳試料を提供できるブレインバンクが不可欠である。筆者らは全国に先駆け精神疾患ブレインバンクを構築し20年以上にわたって運営してきた。当バンクは,当事者・家族の積極的参加による運営,賛助会による支援,インフォームド・コンセントによる当事者・健常者の生前登録,開かれた研究活動を基本理念としている。2016年からは日本ブレインバンクネット(JBBN)が組織され,全国に拡がる生前登録者の希望に対応すべく,ブレインバンクの全国ネットワーク化が進められている。本稿ではわが国における精神疾患ブレインバンクの取り組みを紹介するとともに,死後脳試料を用いた精神疾患研究の現状について概説する。