著者
洞井 裕介 領木 慎一 山下 真弘 長坂 雄一 仙田 航基 坂本 洋介
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J106-B, no.8, pp.582-593, 2023-08-01

ローカル5Gは,携帯電話事業者による全国向けの5Gとは別に,5Gを企業等が自らの建物,敷地内で整備できる制度である.鉄道事業者においてローカル5Gを導入するためには,車両走行中の伝送品質等の動的変化や,敷地外へ漏れる電波の影響について,鉄道固有環境での検証が必要である.今回,新幹線回送線沿いにローカル5Gシステムを構築し,指令からの監視等,走行中の回送車両上から地上への映像伝送や,車両センターにおける保守作業にローカル5Gを活用することを念頭に試験を実施し,ローカル5Gにおける伝送品質等の動的変化,映像伝送特性,車両センター着発収容庫車両内の電波特性,敷地外電波強度に関するデータを収集・解析し,鉄道固有環境が及ぼす影響を検証した.その結果,回送車両上と地上との間で,システム仕様上の最大スループットを達成し,地上への4Kカメラ映像伝送に成功した.また,車両センター着発収容庫内の電波環境を明らかにした.更に,自己土地から最大約1 km離れた地点で,制度上調整対象区域とされる強度の電波を観測した.そして,使用環境が屋外か屋内かにかかわらず,自己土地外での電波強度確認が必要であることを明らかにした.