- 著者
-
津村 耕司
- 出版者
- 東京大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2008
宇宙近赤外線背景放射(CIB)のロケット観測プロジェクトCosmic Infrared Background Experiment(CIBER)を進めている。CIBには銀河や星などの既知の天体からの寄与だけでは説明できない超過成分が存在し、第一世代天体の寄与が示唆されている。CIBERでは、液体窒素冷却された4本の専用望遠鏡をロケットに搭載し、大気圏外からCIBの絶対スペクトルや空間的ゆらぎを観測し、初期宇宙における星形成の様子を明らかにする。2009年2月25日にCIBERの第1回のロケット観測は無事に実施され、良好なデータを得ることが出来た。CIBER搭載光学系Low Resolution Spectrometer(LRS)で得られた空のスペクトルを解析した結果、黄道光のスペクトル中に今まで予期されていなかった吸収帯が900nm辺りに見つかった。この黄道光スペクトルを詳しく解析した結果、黄道光を担う近地球の惑星間塵は、小惑星帯に分布するS型小惑星起因であると結論した。惑星間塵の起源については、小惑星起源か彗星起源かという論争が長く続いているが、今回の結果は、この論争の解決に大きく貢献する非常に重要な発見であると思われる。CIBERは観測後に装置を回収して複数回の観測を行う計画となっており、第2回の打上げ観測は2010年6月の予定である。そこで回収された観測装置を第2回フライトに向けて改修・再調整も行った。特に第1回の観測結果から検出された迷光対策のため、LRSの既存のバッフルおよび迷光対策のために改造された新たなバッフルの性能比較評価実験およびその解析をすすめてきた。そのような仕事の結果、改造をほどこした第2回のフライトでは迷光成分は10分の1以下になることが期待できるとの結果が得られ、想定されている精度の観測が達成可能であるという結果が得られた。