著者
松隈 治久 横井 香平 安楽 真樹 神山 由香理 森 清志 津浦 幸夫
出版者
特定非営利活動法人 日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.143-146, 2001-04-20 (Released:2011-08-10)
参考文献数
8
被引用文献数
2

中枢の気管支腔内にポリープ状に発育する定型的カルチノイドの2症例について, HRCT所見と病理所見を比較検討した. 1例は61歳男性で, 左主気管支内腔をほぼ閉塞する可動性のあるポリープ状の腫瘍を有し, 他の1例は39歳男性で, 右中間気管支幹内腔を占める可動性のあるポリープ状腫瘍を認め, 両者とも生検にて定型的カルチノイドと診断された. 術前に行われた造影HRCTではいずれも気管支内腔に軽度の造影効果を有する腫瘍としてとらえられ, 明らかな壁外進展の所見は認めなかった. 前者は残存肺の再膨張が得られず肺全摘術を, 後者は中間気管支幹管状切除術を施行した. 切除標本の病理検査では両者とも細い茎 (8mm, 9mm) を有しほぼ全体が気管支腔内に存在する腫瘍であったが (大きさ3.5×1.8×1.2cm, 2.0×1.3×1.0cm), いずれもわずかに気管支軟骨の外側にまで腫瘍浸潤を認めた. HRCTにて明らかな壁外成分や気管支壁の肥厚や不整所見を示さなかったが, 病理学的には気管支軟骨外まで浸潤していた中枢発生定型的気管支カルチノイド症例を2例経験したので報告した.