著者
浅井 秀子 長野 和雄
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間と生活環境 (ISSN:13407694)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.9-17, 2006-05

本報では,山陰地方の町家3軒を対象に,2001年8月29日から9月6日までの8日間において,室内から戸外に至る一連の空間の夏期温熱環境を実測した.その結果,トオリニワの土間空間と小さな坪庭において気温が低かった.その結果を踏まえ,坪庭と連結した居住空間への影響を詳細に把握するために町家1軒を対象に,2003年8月22日から8月25日までの4日間において,坪庭及び隣接する2室に熱電対を60点に設置し観測を行った.坪庭が冷涼な外部空間を形成していることが確認され,さらに坪庭との仕切りを開放することによって,坪庭からの冷気が各室に染み入り,室温を下げることが示された.すなわち,坪庭は隣接する各室に対し有効な暑熱緩和性能を備えており,環境共生の視点からみて重要な空間であるといえる.
著者
浅井 秀子
出版者
鳥取短期大学
雑誌
鳥取短期大学研究紀要 (ISSN:13463365)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.17-28, 2003-06-01

前報により, トオリニワの土間空間と比較的小さな坪庭が, 町屋の冷涼空間となっていることが明らかになった. 本報では, 比較的小さな坪庭における涼しさは, 床下の冷気が坪庭空間に積層化することに起因しており, 大きな中庭には見られないことが明らかとなった. しかしながら, 坪庭空間に滞留した冷気が, 隣接する内部空間にどのような冷涼効果を及ぼすかについては, 解明に至らなかった. また調査対象地区の居住者にアンケート調査を行った結果によれば, 調査対象を「坪庭あるいは中庭があり, トオリニワを使用している人」に絞ると, 夏に「暑いとは感じない人」が53%であった. その仕組みとしては, 庭と内部空間の関係やトオリニワなどの吹き抜け空間の設えが深く関わっていると考えられる.
著者
浅井 秀子
出版者
鳥取短期大学
雑誌
鳥取短期大学研究紀要 (ISSN:13463365)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.45-51, 2004-06-01

坪庭空間と連結している屋内空間の温熱環境を把握するために, 温度と気流の変動に焦点を絞り, 観測を行った結果を報告する. 坪庭内の気流の変化は, 上空を強い北風が吹いた時, その風圧によって, 床下内の冷気が坪庭下層に吸い出され, 庇の下部で空気のかくはん現象が起こると推測される. そして発生した冷気が, 風下側に吹き込むと考えられるが, 風上側との温度差がそれ程大きくないことから, 坪庭に発生した冷気を含まない風か, 室内に吹き込むまでに温度が上昇してしまったと考えられる.