著者
長野 和雄
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会環境系論文集 (ISSN:13480685)
巻号頁・発行日
vol.81, no.719, pp.9-17, 2016 (Released:2016-01-30)
参考文献数
24
被引用文献数
3 4

This study quantifies the intensities of degree and frequency of Japanese common expressions that modify adverbially an inflectable word. The 107 and 111 college-aged subjects were asked to arrange 19 words of degree and 16 words of frequency in order of the intensity, respectively. The diagonal paired comparison test was also applied to both 21 degree words and 21 frequency words using 1210 and 1200 college-aged subjects. Based on the derived intensities and the investigation conducted by Oda in 1969, the valid usage of these expressions in order to analyze open-ended responses and to constitute an ordinal scale was discussed.
著者
長野 和雄 志村 恭子 三嶋 真名美 井上 司 桐山 和也 須藤 美音 堀越 哲美
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.81-94, 2020-11-12 (Released:2021-04-23)
参考文献数
39

本研究はアスファルト道路舗装材の改質によって夏季の屋外歩行者への熱的影響を緩和できるかを検討した.密粒,透水性,遮熱性,保水性アスファルト舗装および対照として芝生を加えた5種類の舗装体を豊田市内の屋外試験場に各5m四方の大きさで敷設した.観測項目は,各舗装体における鉛直温度分布・4成分放射量・蒸発水量,代表1点における気温・湿度・風向・風速・降水量・全天日射量,透水性舗装および保水性舗装の2小試験体の含水量変化であった.最も表面温度が低かったのはアルベドが約0.2であった芝生で,次いでアルベドが約0.3と最も高かった遮熱性舗装であった.アルベドが芝生と同程度であった保水性舗装の表面温度は遮熱性舗装よりわずかに高かった.これは芝生と保水性舗装では蒸発冷却によって表面温度上昇が抑えられていたためである.遮熱性舗装とは対照的に,密粒・透水性舗装はアルベドが0.1未満のため表面温度が非常に高いが,上向き短波長放射量は非常に少なかった.そのため新たに開発した体感指標・有効受感温度OETを用いて評価すると,全放射の体感影響は遮熱性舗装が最も大きく,保水性舗装が2番目に小さく,芝生が最も小さかった.ただし晴天日が続くと芝生の蒸発冷却効果は低下するが保水性舗装では継続するため,保水性舗装は歩行者の熱ストレス緩和に対し効果的と評価された.
著者
橋本 剛 鈴木 健次 長野 和雄 石井 仁 兼子 朋也 堀越 哲美
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会環境系論文集 (ISSN:13480685)
巻号頁・発行日
vol.75, no.656, pp.907-913, 2010-10-30 (Released:2011-02-16)
参考文献数
24
被引用文献数
2 3

The objective of this study is to clarify the effect of a series of windbreaks on the microclimate in a settlement. Horage settlement is located in Tsukuba City where the seasonal cold wind called“Tsukuba-Oroshi”blows in winter, and that settlement is surrounded with windbreaks. Field observations of air temperature, humidity, wind direction and velocity were conducted in winter of 2006 and 2007. The protecting effect of windbreaks against the seasonal prevailing wind was observed clearly in the daytime when the strong wind blew in the observation area. Wind velocity in the built-up area was decreased with about 45% of that in the outside of the settlement. The heat island appeared clearly in the early morning and at night when the wind was weak or calm. Daily ranges of air temperature were small in the northeast area covered with dense windbreak woods.
著者
浅井 秀子 長野 和雄
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間と生活環境 (ISSN:13407694)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.9-17, 2006-05

本報では,山陰地方の町家3軒を対象に,2001年8月29日から9月6日までの8日間において,室内から戸外に至る一連の空間の夏期温熱環境を実測した.その結果,トオリニワの土間空間と小さな坪庭において気温が低かった.その結果を踏まえ,坪庭と連結した居住空間への影響を詳細に把握するために町家1軒を対象に,2003年8月22日から8月25日までの4日間において,坪庭及び隣接する2室に熱電対を60点に設置し観測を行った.坪庭が冷涼な外部空間を形成していることが確認され,さらに坪庭との仕切りを開放することによって,坪庭からの冷気が各室に染み入り,室温を下げることが示された.すなわち,坪庭は隣接する各室に対し有効な暑熱緩和性能を備えており,環境共生の視点からみて重要な空間であるといえる.
著者
長野 和雄 堀越 哲美
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.23-34, 2017-05-01 (Released:2017-05-31)
参考文献数
41

奈良県旧宗檜村の土地台帳に記載されているすべての小字の中から日当たりの良悪を表す日向地名・日陰地名を収集し,その地の日照・日射特性を GIS により検証した.日陰地名は日向地名に比べ標高が低く,天空率が低く,可照時間が短い.日陰地名の傾斜方位は北・北西・北東,日向地名は南西・南に多い.冬至における日陰地名の日積算散乱日射量,直達日射量は日向地名のそれぞれ 81%,21% と顕著に少ない.しかしながら日陰地名を持つ地にも日向地名同様に住宅地・農作地があり,土地利用形態に明確な差は認められない.また住民は既に小字名をあまり用いず,日当たりに対する認識も必ずしも明確ではない.
著者
長野 和雄
出版者
日本生気象学会 / Japanese Society of Biometeorology
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.87-93, 2004-12-01
参考文献数
25
被引用文献数
4

人間と環境の関係を総体的に把握するためには,複数の環境要素を同時に対象とする複合影響研究が重要な役割を持つ.そのためには,個々の環境要素を共通の尺度上で表し得る非特異的な評価が有効な手段となる.同時に個々の要素の影響についても把握し,総合評価との関連を知ることもまた重要である.非特異的評価法の一つである総合的快適性を,アリストテレス以来指摘されている共通感覚のアナロジーとして捉え,その重要性について論じられる.また,これまで行われてきた総合評価を定量的に得た研究を概観し,これらに共通して認められる知見である排他的性質や,今後の課題・展開について述べられる.<br>
著者
長野 和雄
出版者
京都府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

衣替えや冷房の使用のような生活上の季節現象を生活季節という。 本研究の目的は、桜の開花時期を示す桜前線のように、衣替えの時期や冷房開始時期などを気象条件から予測し衣替え前線や空調開始前線として示すことである。京都市域の住民に対し、毎日の21行為の有無をウェブアンケートにより1年間尋ねた。同期間に、京都で総合気象観測を行い体感温度ETVOを算出した。これらから体感温度と各行為の関係を数量化し、これを全国836地点の気象データに適用し、各地における各行為の開始・終了時期を推定した。そして推定期日の分布を線図として表した。
著者
住里 公美佳 長野 和雄
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.111-134, 2018-03-01 (Released:2018-04-10)
参考文献数
28
被引用文献数
1

本研究は,生活季節の開始日・終了日の等日線図を導出することを目的とする.京都市域在住の男女各 111 人に対し,毎週日曜日に 21 の行為についてのウェブアンケート調査を 1 年間続けた.アンケート調査と同期間に,京都で気温・湿度・風速・長短波放射量の気象観測を行い,これらのデータを基に体感温度 ETVO を算出した.日平均 ETVO に対する生活季節の実施率の散布図より回帰式を算出し,回答者の 20% または 80% がその行為を開始・終了する日(初日 20/80%・終日 20/80% と称す)の ETVO(初日 20/80%ETVO・終日 20/80%ETVO と称す)を算出した.全国 836 の観測地点の日平均 ETVO が算出した初日 20/80%ETVO・終日 20/80%ETVO と一致する日をその地における初日 20/80%・終日 20/80% と定義し,初日 20/80%・終日 20/80% の生活季節の等日線図を作成した.1950 年代の炬燵に関する先行研究と比較して,現在ではほとんどの地域で 2 週間早く炬燵を使い始め,1 ヶ月遅く使い終えたことが読み取れた.
著者
渡邊 慎一 石井 仁 長野 和雄
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間-生活環境系シンポジウム報告集
巻号頁・発行日
vol.38, pp.107-110, 2014-11-20

本研究は、日傘使用時の温熱環境に総合有効温度ETUを適用し、その算出法を示した。実測データを用いて日向および3種の日傘使用時のETUを算出した。その結果、日向のETUは49.9℃であることを示した。ラミネート加工(黒)日傘のETUが最も低く44.9℃であり、日向のETUとの差は-5.0℃であった。また、通常加工(黒)日傘の日向との温度差は-3.7℃、通常加工(白)が-2.6℃であった。
著者
長野 和雄 堀越 哲美
出版者
Japanese Society of Biometeorology
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.5-18, 2004-08-01
被引用文献数
4

本研究は,熱的中立から寒冷側の熱条件および交通騒音条件下において人体の心理反応に及ぼす複合影響を定量的に捉え,新しい環境評価指標を作成・提案することを目的としている.作用温度(19, 22, 25, 28°C)・等価騒音レベル(46.6 dB(A):空調騒音;58.5, 72.9, 79.9, 95.5 dB(A):交通騒音)の組合せ20条件について,男子学生22名の被験者の申告を得た.その結果,熱条件は暑さだけでなくうるささに,音条件はうるささだけでなく暑さに有意に影響した.熱と音の両方が明らかに総合的快適性・不快性に影響した.熱的快適性・不快性と聴覚的快適性・不快性をそれぞれ軸とした,そして作用温度と等価騒音レベルをそれぞれ軸とした等快適線図および等不快線図が提案された.これらは新しい快適性指標として本実験条件の範囲内で有効であると考えられる.<br>
著者
長野 和雄
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

強風沿海集落である祝島でのアンケート結果から、集落中央部では風が弱く昔からネリヘイ(石塀)やサシイタ(窓部に装備する防風板)が元々少ないこと、室面積の確保や瓦が飛ばないRC造の優位性からネリヘイを備える伝統住宅が減っていること等が示された。居住面では、ネリヘイ・葺土がある場合に夏でも涼しく、先の気候観測結果を裏付けていた。簾や葦簀の使用(機器によらない環境調節)、朝涼み・夕涼み(環境選択行為)などの暑熱耐暑行動がよく行われていたが、ヒヤリングでは最近は少なくなったと回答され、ネリヘイだけでなくこれらの調節行為も減る傾向にあることが示された。同じ強風沿海集落でも有明海北西岸には、寄棟屋根が鍵状に折れ曲がり、棟がコの字型に配されたクド造りが数多く残る。ほとんどの遺構で屋根谷部が北北東を向くが、気象観測データより夏季の卓越風向は概ね南、冬季は北西であり、むしろ北東から東に屋根谷を向けた方が防風性能は高いことが明らかとなった。一方、現存する22件の軒出・庇高を実測し、オモテへの日照到達距離を算出した結果、採光の観点からは北、次いで北北東に屋根谷を向けた場合が都合よく、北東まで東に振れると冬季の日照導入・夏季の日射遮蔽ともに悪化することが明らかとなった。すなわち、採光と耐風の両面から最もバランスの良い方位となっており、民家の巧みな気候適応性能が明らかになった。これらの室内での総合的快適性を評価するため、複数物理要素の複合影響実験により新たな等快適線図を作成した。すなわち、22名の被験者を寒冷および騒音に曝露した実験から、気温と騒音レベルから快適度を数量的に表す等値線図を寒冷側に拡張した。男女16名の被験者を光源照度・色温度、気温、周囲色彩の組合せ条件に曝露した実験から、色温度と照度の組合せによる快適範囲を新たに示した。
著者
長野 和雄 高柴 日香 小松 充典 兼子 朋也 堀越 哲美
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.141-164, 2009-01-01
参考文献数
60
被引用文献数
2

島根県吉田町の 2 集落を対象に,集落気候と室内気候の実測,住まい方や生活実感に対する住民へのアンケート調査を行い,伝統的住宅自身が備える,あるいは住まい方の中に隠れた,地域気候に対する適応の技術を検証した.集落気候の空間的分布と経時的な変化を体感指標 ETV で評価した.これにより,山間部の起伏に富んだ地形によって大きく変化する日射量や風速の影響,時間や季節による放射や着衣の影響を詳細に捉えた.室内気象は,建物自身の熱的性能によってある程度緩和されつつも,その外界気象に応じて変化した.特に夏季については日射の影響が明らかであった.夏季は至適域よりも高く,冬季は至適域よりも低い室内気候が形成されていた.その室内気候に対する居住者の実感,暑さ・寒さの対処法の実態を明らかにした.夏季には,エアコンの使用を控えて扇風機の使用に留め,通風や着衣による調節,環境選択などのエネルギー消費を要しない手法を多用した,地域気候に適応した生活が展開されていた.冬季にはほとんどの世帯でコタツまたは炭コタツが多用されていた.開放式燃焼器具も多くの世帯で併用されていたが,間欠的に使用していた世帯よりも常時使用していた世帯の方がむしろ不満と感じていた.また,室内での着衣の多さなど,ここでも過度にエネルギーを消費しないよう工夫されていた. / The purpose of this research is to verify techniques of adaptation to the local climate in traditional homes themselves, or in the lifestyle, in two villages in Yoshida-cho, Shimane Prefecture. This was done by measuring the outdoor and indoor climate, and conducting a questionnaire survey of residents regarding their lifestyle and actual living experience. The spatial distribution and variation over time in local climate were evaluated by using the ETV temperature index. This made it possible to capture the detailed effects of the amount of insolation and wind speed, which vary greatly due to the highly undulous mountain terrain, and the impact of long-wave radiation and clothing depending on the time and season. Although the thermal performance of buildings themselves eased slightly the effects of weather outside, the indoor temperature varied in response to the outdoor weather. The effect of solar radiation was particularly clear in the summer. The indoor climate was above the comfort zone in summer and below the comfort zone in winter. The results of questionnaire survey showed that, in summer, the lifestyle was adapted to the local climate, and residents frequently used techniques with lower energy consumption, such as refraining from using air-conditioners and making do with electric fans, regulating temperature with ventilation and clothing, and engaging in environment selection behavior. In winter, almost all households provided local heating with an electric or charcoal kotatsu. Open-type heaters were also used in many households, but the households who used them constantly tended to feel more dissatisfaction than those who used them intermittently or in an auxiliary fashion. Here too, creative techniques were used to avoid excessive energy consumption, such as wearing more clothing indoors.