著者
土井 元章 小田 尚 小笠原 宣好 浅平 端
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.963-970, 1992
被引用文献数
2 3

順化準備段階(培養最終段階)にあるカラジウム(C3植物),サトウキビ(C4植物),ファレノプシス(CAM植物)を2%のショ糖を含む培地を用いて,全日長,16時間日長,8時間日長下で培養した.半数の培養器に対して,0.8±0.4%のCO2を含む空気を連続通気することでCO2施用を行った.残り半数の培養器では,気相をなりゆきとした。<BR>CO2施用を行わず気相をなりゆきとした場合,CO2施用を行った場合とも,日長が長いほど培養植物の生長は促進された.培養植物にCO2を供給することにより,全日長下で培養したカラジウムを除き,いずれの日長下でも乾物生産が増加した.このCO2による生育促進効果は,主として根に顕著に認められた。<BR>カラジウムとファレノプシスにおけるCO2施用下の培養では,葉身のクロロフィル含量が減少する傾向にあった.しかし,CO2飽和レベルで測定した明期中央におけるCO2の取り込み速度は,CO2無施用の場合に比べて,CO2施用区で大きくなった。<BR>培養器中のO2濃度もまた,培養植物の生長に影響を及ぼした。CO2施用下でO2濃度を37%に高めると,カラジウムおよびデンドロビウム•ファレノプシス(CAM植物)の生長が促進された。<BR>糖を含まない培地でCO2施用を行い培養して得たカラジウムのプラグ苗は,培養時に光独立栄養状態への移行が促されたことにより,慣行の培養方法で得られた苗に比べて,培養終了直後の順化期間中の生育がすぐれていた。<BR>謝 辞 本稿をとりまとめるにあたり,御校閲を賜った大阪府立大学今西英雄教授に謝意を表する。
著者
土井 元章 武田 恭明 浅平 端
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.621-626, 1990 (Released:2007-07-05)
参考文献数
8
被引用文献数
3 1

シュッコンカスミソウ‘ブリストル•フェアリー’の露地栽培における花芽の形成過程を走査型電子顕微鏡を用いて観察した.低温遭遇量の多い苗では, 花芽の形成は茎長が18cmに達した4月15日から20日にかけて始まり, その後がく片, 花弁が形成され4月30日前後に頂花において雄ずいが形成された. 5月5日から10日にかけて, 外見的には出ちい期を迎え, 頂花において雌ずいの形成が観察された. その後, 雌ずいが伸長し, 雄ずいの花弁化, ならびに花弁, 雄ずいの伸長へと進み, がく片が展開して5月30日には開花に至った.一方, 低温遭遇量の少ない苗では, 花芽の形成開始が遅くなり, また下位節では花芽形成が起こらなかったが, 花芽形成開始後の頂花における花器原基の形成や発育は低温遭遇量の多い苗の場合と同様に進行した.
著者
土井 元章 森田 隆史 武田 恭明 浅平 端
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.795-801, 1991
被引用文献数
1 2

シュッコンカスミソウの生育開花に関する低温要求性の異なる品種, 系統を用い, 冬期の低温に遭遇した後の株において, シュートの種々の生育段階における高温遭遇がロゼットの形成および奇形花の発生に及ぼす影響について検討した.<br>その結果, シュートが栄養生長段階である3月31日から4月10日に昼温30°C (6:00~18:00) 夜温25°Cの高温処理を施すと, 低温要求性の大きい'パーフェクタ', 'ブリストル•フェアリー'20系統では, その後生育, 開花に好適な条件下で栽培してもすべてのシュートがロゼットを形成した. これらの品種, 系統についで低温要求性の大きい'ダイヤモンド', 'ブリストル•フェアリー'03系統においても高温遭遇後は半数のシュートがロゼットを形成した. 一方, 低温要求性の小さい'フラミンゴ', 'レッド•シー', 'ブリストル•フェアリー'08系統では, ロゼットを形成することなく, 開花に至った.<br>花芽形成開始直後に処理した高温は, 開花時の花茎を短くし, 主茎上の下位節での花芽形成を抑制した以外, 形態的な変化をもたらさなかった.<br>頂花における雄ずい形成期である4月30日前後に高温を処理すると, 奇形花が発生した. 奇形花の形態的な観察を行ったところ, 奇形花は, 各小花が雄ずい形成期ごろに高温に遭遇することにより, その後雄ずい原基の細胞分裂活性が長期にわたり維持されるようになり, 雄ずいの花弁化が異常に進み, 花弁数が増加するとともに分裂部を中心に花弁塊が形成される結果, 発生するものと考えられた. また, 高温による奇形花の発生は, 低温要求性の大きい品種, 系統ほど著しい傾向にあった.<br>以上の結果より, 低温遭遇後に高温に遭遇すると, 高温が低温の効果を打ち消し, 生理的にロゼット化を誘導する結果, 分裂組織における生育がより栄養生長的となり, 形態的にロゼットや奇形花を形成するようになることが考察された.