著者
土井 元章 武田 恭明 浅平 端
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.621-626, 1990 (Released:2007-07-05)
参考文献数
8
被引用文献数
3 1

シュッコンカスミソウ‘ブリストル•フェアリー’の露地栽培における花芽の形成過程を走査型電子顕微鏡を用いて観察した.低温遭遇量の多い苗では, 花芽の形成は茎長が18cmに達した4月15日から20日にかけて始まり, その後がく片, 花弁が形成され4月30日前後に頂花において雄ずいが形成された. 5月5日から10日にかけて, 外見的には出ちい期を迎え, 頂花において雌ずいの形成が観察された. その後, 雌ずいが伸長し, 雄ずいの花弁化, ならびに花弁, 雄ずいの伸長へと進み, がく片が展開して5月30日には開花に至った.一方, 低温遭遇量の少ない苗では, 花芽の形成開始が遅くなり, また下位節では花芽形成が起こらなかったが, 花芽形成開始後の頂花における花器原基の形成や発育は低温遭遇量の多い苗の場合と同様に進行した.
著者
土井 元章 森田 隆史 武田 恭明 浅平 端
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.795-801, 1991
被引用文献数
1 2

シュッコンカスミソウの生育開花に関する低温要求性の異なる品種, 系統を用い, 冬期の低温に遭遇した後の株において, シュートの種々の生育段階における高温遭遇がロゼットの形成および奇形花の発生に及ぼす影響について検討した.<br>その結果, シュートが栄養生長段階である3月31日から4月10日に昼温30°C (6:00~18:00) 夜温25°Cの高温処理を施すと, 低温要求性の大きい'パーフェクタ', 'ブリストル•フェアリー'20系統では, その後生育, 開花に好適な条件下で栽培してもすべてのシュートがロゼットを形成した. これらの品種, 系統についで低温要求性の大きい'ダイヤモンド', 'ブリストル•フェアリー'03系統においても高温遭遇後は半数のシュートがロゼットを形成した. 一方, 低温要求性の小さい'フラミンゴ', 'レッド•シー', 'ブリストル•フェアリー'08系統では, ロゼットを形成することなく, 開花に至った.<br>花芽形成開始直後に処理した高温は, 開花時の花茎を短くし, 主茎上の下位節での花芽形成を抑制した以外, 形態的な変化をもたらさなかった.<br>頂花における雄ずい形成期である4月30日前後に高温を処理すると, 奇形花が発生した. 奇形花の形態的な観察を行ったところ, 奇形花は, 各小花が雄ずい形成期ごろに高温に遭遇することにより, その後雄ずい原基の細胞分裂活性が長期にわたり維持されるようになり, 雄ずいの花弁化が異常に進み, 花弁数が増加するとともに分裂部を中心に花弁塊が形成される結果, 発生するものと考えられた. また, 高温による奇形花の発生は, 低温要求性の大きい品種, 系統ほど著しい傾向にあった.<br>以上の結果より, 低温遭遇後に高温に遭遇すると, 高温が低温の効果を打ち消し, 生理的にロゼット化を誘導する結果, 分裂組織における生育がより栄養生長的となり, 形態的にロゼットや奇形花を形成するようになることが考察された.
著者
桝田 正治 古市 朋子 武田 恭明
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.93-98, 1998-01-15
被引用文献数
2 1

トマト固定品種'ファースト'の乾燥種子に総線量100, 200および400Gyのガンマー線(^<60>Co)を照射して突然変異の誘発を試みた.照射時間はいずれも5時間とした.1. 照射種子(M_1)はいずれも発芽するが, 線量が高くなるほど実生の生育が劣り400Gy区では子葉展開後に枯死した.100Gy区では照射種子の約80%, 200Gy区では38%の株でM_2種子が採種できた.M_1株の花粉稔性は照射区で劣り, 100Gy区より200Gy区で顕著であったが, 全不稔の花は存在しなかった.また, 花粉稔性と種子数の間には相関は見られなかった.2. M_2世代において, 100Gy区の188系統では3種類の突然変異が出現した.つまり, 葉幅の狭い系統, 10%以下の可稔花粉系統, オリジナルと同じ雄ずい型の雄性不稔系統である.200Gy区の88系統では9種類の突然変異が出現した.つまり, 葉緑素突然変異としてアルビノ, ビリデイス, キサンタおよび部分欠損の4系統, 10%以下の可稔花粉系統, オリジナルと同じ雄ずい型の雄性不稔系統, 葯が萎縮して褐色となり柱頭が突出する雄性不1稔系統, 葯は正常に発育するが, その葯の先端に柱頭が突出する雄性不稔系統および発芽不能系統であった.以上の結果より, トマト種子から突然変異を誘発する場合のガンマー線の好適照射線量は200Gy付近にあると考えられた.3. 葉緑素部分欠損形質は, ヘテロ自家受粉種子における分離比が正常 : 欠損=3 : 1に適合したことから, 1劣性遺伝子によって支配されているものと推察された.葉緑素欠損葉において生育中に線状や点状に緑色を発現する個体があり, その発現部分が拡大すると個体の生存は可能となった.