著者
浅沼 敬子
出版者
美学会
雑誌
美学 (ISSN:05200962)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.55-68, 2006-03-31 (Released:2017-05-22)
被引用文献数
1

Der Zyklus "18. Oktober 1977"(1988) von Gerhard Richter gilt als ernes der bedeutendesten Werke dieses produktiven Malers. Diesem Zyklus, der eine Reihe von Ereignissen im Zusammenhang mit der RAF (Rote-Armee-Fraktion) reprasentiert, gaben viele Kritiker die Bezeichnung 'Historienmalerei'. Bei dieser Kritik ging es um die Bedeutung von fotografischen und malerischen Bildern (Images), weil der Zyklus die Technik der Thoto-Bilder', namlich Fotografien abzumalen benutzt, eine Technik, auf die der Maler schon in der Mitte der 70er Jahren verzichtete. Nach Benjamin Buchloh und David Green bedeutet einerseits das fotografische Bild vom Zyklus die Vergangenheit, d.h. die vom Foto 'imitierbaren' vergangenen Ereignisse der RAF, und weist anderseits das malerische Bild auf die Gegenwart, d.h. die Aktualitat der Malerei hin. Dagegen betrachtet die vorliegende Abhandlung den Zyklus als den ethischer Bilder, entsprechend den Worten von Jean-Christoph Ammann und des Malers selbst. Demnach zeigt das Motiv der RAF nur beispielhaft den Tod als den Schluss der 'Ideologie'. Auf diesem Standpunkt stehend, versucht diese Abhandlung, die Notwendigkeit der Technik der Thoto-Bilder' fur den ethischen Zyklus im Vergleich mit den Thoto-Bildern' in den 60er und 70er Jahren aufzuzeigen.
著者
浅沼 敬子
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

ゲルハルト・リヒターによる1960年代のフォト・ペインティング作品(写真を元にした絵画作品)については、リヒター本人の言もあって、多くの研究者がその政治的、歴史的意味を指摘することに慎重だった。しかしミステレク=プラッゲの基礎研究(1990/1992)以降、近年では、2007年のディートマー・エルガーやディートマー・リューベルの指摘に見られる通り、リヒターのフォト・ペインティング作品のさまざまな意味が指摘されている。本研究の第一の成果は、ミステレク=プラッゲにならって、ドイツの週刊誌「シュテルン」「クイック」「ブンテ」「レヴュ」「ノイエ」(「レヴュ」と「ノイエ」は1966年に統合された)の1962-66年を再調査し、さらに「シュピーゲル」誌の調査、前誌の1959年、1967年分等の調査を加えて、リヒターが切り抜いた約160枚のうち、約70枚の写真の出自を特定したことである。それによって、ミステレク=プラッゲやエルガーらが部分的に指摘した、リヒターのフォト・ペインティング作品の歴史的、さらにいえば「悲劇的」意味が、より説得力ある仕方で指摘されるに至った。本研究の第二の成果は、1960年代のゲルハルト・リヒターのフォト・ペインティング作品から、1988年の『1977年10月18日』を経て、ドイツ国会議事堂のために制作された1998年の『黒、赤、金』にまで通底する意味的一貫性を指摘したことである。『黒、赤、金』は、一見すれば抽象的作品だが(これは油彩ではなくガラス作品である)、よく知られているように、リヒターはこれを「ホロコースト」写真をもとにした、1960年代以来のフォト・ペインティング的作品として構想していた。従って、1960年代から1990年代まで、リヒターの試みの一貫性が指摘され得るのである。こうして、リヒターの画業を1960年代から再構成することによって、従来個別にしか指摘されてこなかったその政治的、歴史的意味を、一貫したものとして描き出したのが本研究の重要な成果である。