著者
浅野 志津子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.141-151, 2002-06-30
被引用文献数
6

生涯学習に参加し続けるためには,学習に意欲的に取り組む「積極的関与」のみならず,長期的に学習を続けようとする「継続意志」も必要となる。研究1では,これら2つがどのような要因によって促進されるのかを学習動機を中心に検討する。放送大学と一般大学学生等計879名に質問紙調査を行い,「積極的関与」「継続意志」「学習動機(5尺度)」の各尺度を構成した。「積極的関与」「継続意志」は,放送大学学生が一般大学学生よりも高く,生涯学習参加における重要な側面であることが示唆された。重回帰分析の結果,「積極的関与」を強化する主な学習動機は「特定課題志向」であり,「継続意志」に関しては「自己向上志向」と「特定課題志向」であった。研究2では,これらの学習動機がどのように生涯学習を促進するようになったのかその過程を検討するために高齢の放送大学学生13名に面接を行った。その結果,「自己向上志向」の学習動機は青少年期の学習不充足感に端を発し,仕事上の挑戦,すぐれた人との比較を経て強められ「継続意志」につながり,「特定課題志向」は青少年期の学校または仕事外で課題に取り組む経験を経て,現在の課題に対する「積極的関与」を高めている傾向が示唆された。
著者
浅野 志津子
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.230-240, 2006-12-20 (Released:2017-07-27)
被引用文献数
3

本研究では,先行研究ですでに検討されている学習動機に加えて,どのような学習の楽しさが生涯学習参加の2つの側面,即ち,現時点での学習への意欲的な取り組み方をあらわす積極性と将来にわたって学習を継続しようという持続性に影響するのかを検討した。研究1では,放送大学学生365名に質問紙調査を行い,学習の楽しさ尺度(3尺度)を構成した。重回帰分析を行い,年齢別に検討すると64歳以下では知る楽しさ,65歳以上の高齢者では多様に思考する楽しさが生涯学習参加への積極性と持続性に影響していた。しかし,高齢者の「多様思考の楽しさ」が影響を及ぼす生涯学習の側面は教育年数によって異なり,高等教育修了者では持続性に影響し,初等・中等教育修了者では積極性に影響していた。研究2で,高齢の学生21名に面接調査を行い,その相違を検討した。その結果,高等教育修了者の「多様思考の楽しさ」は多分野の学問を次々に関連づけ,興味が広がる「拡大的多様思考の楽しさ」であるために持続性につながり,初等・中等教育修了者のそれはある課題に対して異なる視点を獲得して理解を深める「深化的多様思考の楽しさ」であるためにその課題に対する積極性につながるという傾向が窺われた。