著者
浅野 美礼
出版者
滋賀医科大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

難解と感じる一般ユーザのパソコンの使用感は,アプリケーションの使用方法や機器操作自体の難解さよりも,ファイルシステムなどのコンピュータ特有の空間の概念を表現しているインターフェースに対する違和感が相当すると考察し,ユーザが老人あるいは高齢者である場合に適用してその改善の余地を検討した。現実とファイルシステムとの空間の概念の相違を違和感なく吸収するのに貢献するツールは,機器と人間との相互の情報のやり取りを実現する対話型のインターフェースである。現在のインターフェースは,情報の入力側と出力側に分類すると,入力側としてキーボード・マウス・トラックボールや比較的最近のものとしてタッチスクリーン・音声入力といったデバイスがあり,出力側としてGUI・CUI・音・光・震動といった発信器などが既に普及しているものとしては存在する。アプリケーションの設計において,主として上肢の機能が低下した身体障害者・視力・聴力の低下した知覚障害者を使用するユーザとして想定したが,現在の主流であるGUIまたはCUIでは,低下したある能力に対処して搭載した機能は他の障害に対して対処できない。これは複数の機能の低下した高齢者においては,機能面でユーザのニーズを満足させる見込みがほとんどないという結果になった。一方で,高齢者にとっては可能な限り単純化された,操作に迷うことのないインターフェースが求められた。ここにも,複数の機能を搭載しより複数なインターフェースを備えるアプリケーションでは,高齢者にとって円滑に操作できる見込みが低下するという矛盾を抱えた。