著者
浜中 聡子 上條 吉人
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.271-276, 2007-07-01 (Released:2008-10-24)
参考文献数
38

抗精神病薬は, 統合失調症をはじめとする精神障害の治療薬として広く用いられている。欧米では以前より, クロルプロマジンを中心とする従来型抗精神病薬のみならず, クロザピンを中心とした非定型抗精神病薬服用症例に発症する肺血栓塞栓症 (pulmonary thromboembolism, PTE) の報告が多数みられ, 近年ではPTEの治療ガイドラインでも抗精神病薬服用がPTEの危険因子として記載されるようになった。一方本邦では, 抗精神病薬服用がPTEの危険因子のひとつであることは, いまだ十分に認知されていない。しかし最近の研究報告から, 本邦もその例外ではなく, むしろPTE症例の中で抗精神病薬服用症例の割合が非常に高いことが示されている。抗精神病薬服用がPTEの危険因子となるメカニズムは明らかではないが, 血小板の5-HT2A受容体を介した血小板凝集能の亢進や, 薬剤性の全身性エリテマトーデス (systemic lupus erythematosus, SLE) などの関与が指摘されている。今後この分野の研究が進み, 抗精神病薬服用症例の突然死の原因となるPTEの具体的な予防策がもたらされることを期待する。
著者
浜中 聡子 上條 吉人
出版者
南江堂
巻号頁・発行日
pp.856-859, 2006-05-01

ヒステリー性(神経)症は,解離性(転換性)障害(ICD-10)に相当する.解離性障害では症状の原因になる身体的障害がないこと,ストレス負荷となる心理的要因が存在する,などの条件が診断上必要である.意識障害との鑑別が問題となる「ヒステリー」は,その多くが解離性昏迷と解離性痙攣である.解離性昏迷はアピール性が高く,被暗示性が高く,弛緩性昏迷の形をとることが多い.意識障害を伴っていても軽度で,昏睡状態との鑑別が重要である.解離性痙攣は,一見てんかん発作に類似するが,いくつかの特徴で鑑別可能である.発作症状は本人の現実逃避手段だったり,疾病利得と絡んでいたり,通常の不安発作よりも難治である