著者
伊藤 保彦 浜田 久光 五十嵐 徹 継 仁 福永 慶隆
出版者
日本医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1995

これまでの検討の結果、以下のような成績を得た。1)日本医科大学付属千葉北総病院小児科外来においてprospectiveに行った調査では、明らかな基礎疾患を持たない不定愁訴患児140名のうち74名(52.4%)が抗核抗体陽性であり、健常対照群82名中わずか5名が陽性であったのに対して明らかに高率であった(P<0.0001)。2)抗核抗体陽性患児の主訴としては疲労と微熱が多く、消化器症状や起立性調節障害などの訴えは陰性患児に多かった。従って抗核抗体陽性で疲労を訴える患児について“自己免疫性疲労症候群"という疾患概念を提唱したいと考える。3)抗Sa抗体は抗核抗体陽性患児の41.3%に認められ、抗Sa抗体陽性者は陰性者と比べて抗核抗体160x以上の高力価のものが多く、また抗核抗体の蛍光パターンでも1名を除いて全員homogeneous & speckledであるという特性があった。4)抗Sa抗体およびSa抗原の分析としては以下のような性質が明らかになった。a)抗Sa抗体は少くともウシ胸腺抽出液では反応が見られないため、ヒト抗原に特異的である可能性が高い。b)HeLa,Molt 4、ヒト末梢血単核球いずれを抗原としても62kDのバンドは検出されるため、Sa抗原はヒトにおいては臓器特異性に乏しく、広分布している蛋白と考えられる。c)RNA-immunoprecipitation法ではSa抗原に付随して沈降されるRNAは見当らない。以上の様な知見をふまえ、今后再に検討を続けていく計画である。また96年度日本リウマチ学会において以上の成果を発表する予定である。