著者
広瀬 侑 池内 昌彦 浴 俊彦
出版者
日本植物形態学会
雑誌
PLANT MORPHOLOGY (ISSN:09189726)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.41-45, 2017

<p>シアノバクテリアは,1990年代に光合成生物として初めてゲノムがシークエンスされ,光合成のモデル生物として利用されてきた.一方で,シアノバクテリアは多様性の大きな微生物群であり,我々は,シアノバクテリアの光合成アンテナが補色的に調節される光応答(補色順化)の分子機構の多様性について解析を進めている.これまでの解析により,シアノバクテリア門において,補色順化が緑・赤色光感知機構を持つフィトクロム様受容体に制御されていること,補色順化のシグナル伝達経路が2種類存在すること,光色調節を受ける光合成アンテナ遺伝子セットは4種類以上存在することを明らかにしている.さらに,これらの光色感知機構の分布は16Sリボソーム配列に基づく系統樹との相関関係が低いことから,水平伝播による進化が示唆される.今後,より大量の塩基配列情報に基づいた解析を行うことにより,シアノバクテリアの多様な光合成機構の実態が明らかになっていくことが期待される.</p>