著者
海邊 昭子 穴澤 卯太郎 結束 寿 高石 慎也 蓮 琢也 増田 文子 吉村 剛 飯野 孝 田中 康広
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.118, no.10, pp.1220-1225, 2015-10-20 (Released:2015-11-07)
参考文献数
16
被引用文献数
7

2011年5月から2014年3月までの間に当科で入院加療となった扁桃周囲膿瘍患者115症例を対象に年齢, 性別, 患側, 入院期間, 排膿方法, 喫煙歴, 糖尿病の既往, 抗菌薬, 検出菌の9項目について検討を行った. 性別の内訳は男性98例 (再発症例5例含む), 女性17例と男性が85%を占め, 年齢平均は36歳であった. 最も多い世代は30歳代男性で, 全体の27.8%を占めた. 入院期間の中央値は7日であり, 患側は右が52%, 左が44%, 両側例が4%であった. 排膿方法は, 切開が63%, 穿刺のみが37%であった. 喫煙歴は51%で認められ, 糖尿病の既往歴は3.5%に認めた. 抗菌薬は主に ABPC/SBT 単剤を使用している例が多く, 75%を占めた. 検出菌では, 嫌気性菌が検出された症例が63%を占め, そのうち87%が好気性菌との混合感染であった. 好気性菌では α 溶連菌, 嫌気性菌では Prevotella 属が最も多かった. 年齢, 喫煙歴の有無, 切開排膿, 抗菌薬の違い (ABPC/SBT 単剤と複数薬使用) により入院期間を比較検討したところ, 年齢のみ有意差を認め, 65歳未満と65歳以上の群では65歳以上の方が有意に入院期間は長くなる結果を得た. よって高齢者は重症化予防のために慎重な治療介入が必要である. また, 抗菌薬選択には ABPC/SBT の使用により好気性菌と嫌気性菌, 耐性菌を幅広くカバーし, 単剤で十分な効果が期待できる.