著者
涌井 恵
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.381-390, 2013 (Released:2015-03-19)
参考文献数
38
被引用文献数
1

本稿では、おもにLD児を対象に含む通常の学級における協同学習の研究動向について概観し、今後の研究の課題について探った。協同学習は単なるグループ学習ではない。協同学習の5つの基本要素を満たすことで、学力のみならず、社会性、仲間の受容、多様性の理解、高次の思考スキルの促進など、さまざまな効果を及ぼすことができる。学習障害(LD)等の障害のある子どもにも活用される協同学習の代表的な教授モデルについて整理した。また先行研究において協同学習にはどのような効果が示され、今後LD児等を対象にした研究が進展していくためには、どのような課題があるのかを論考した。
著者
涌井 恵
出版者
日本コミュニケーション障害学会
雑誌
コミュニケーション障害学 (ISSN:13478451)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.63-73, 2003-08-30 (Released:2009-11-19)
参考文献数
16
被引用文献数
1

本研究は発達障害児集団において短期援助スキル訓練を行った後,強化の随伴単位をペアとする集団随伴性が標的行動(相談やりとり)に及ぼす効果と自発的な援助行動の会話調整機能について個人随伴性と比較した.その結果,対象児3名中2名には,集団随伴性が標的行動の獲得に及ぼす効果は明確には示されなかった.介入終了後の集団随伴性の理解度についてのアセスメントから,残りの1名は集団随伴性の相互依存性を全く理解しておらず,実際は集団随伴性期に漠然とした個人随伴性による強化が働いていたことが示された.先述の2名は,相互依存性を理解していたものの,ペアの強化まであといくつ正反応が必要か逆算できず,また,ペアの不足(誤反応)分を自分が補えることを知らなかった.自発的な援助行動には三者三様の結果が示された.本研究から,発達障害児集団に集団随伴性を適用する際に考慮すべき条件の1つとして対象児の数的処理能力が指摘された.