著者
増田 研 深井 明比古
出版者
長崎大学多文化社会学部
雑誌
多文化社会研究 = Journal of Global Humanities and Social Sciences, Nagasaki University (ISSN:21891486)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.29-53, 2019-03-18

日本と東アフリカのあいだのヒト、モノ、情報の交流は、いわゆる「日本-アフリカ交流史」として1960年代から少しずつその実態が明らかにされてきた。なかでも近代の人的交流については多くのことが判明しており、九州北部地域出身の人々がすでに明治時代から東アフリカに居住していたことが分かっている。本研究は日本-アフリカ交流史の探求において手薄であった「モノの交流」を明らかにする取り組みの一環として、日本製タイルの流通に着目するものである。筆者らは2017年から2018年にかけてタンザニアのウングジャ島(ザンジバル)にて日本製タイルが墓地やホテルにおいて使用され、かつ、骨董品として流通している状況を確認し記録した。こうした日本製タイルの多くは大正時代から昭和初期にかけて淡路島や名古屋、岐阜で生産されたものである。本論文ではそうしたタイルの「身元」を、考古学的手法を用いて同定し、その使用実態を記述することを通して、20世紀前半に日本製タイルが東アフリカにまで流通していたことを主張する。
著者
増田 研 深井 明比古
出版者
長崎大学多文化社会学部
雑誌
多文化社会研究 = Journal of Global Humanities and Social Sciences, Nagasaki University (ISSN:21891486)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.305-317, 2021-03-23

長崎市南山手の旧レスナー邸は明治中期に建築された、長崎洋館群の一画をなす建物である。この建物の玄関部ポーチに敷かれたタイルについてはいくつかの文献において紹介されているが、その由来については不明なままであった。本稿はこの玄関部ポーチで用いられたタイルを詳細に記述し、長崎における洋館建築史への一助としたい。また、玄関ポーチのタイルについては損傷が著しく、保存や修復のためにもその現況を詳細に記していくことが必要である。“Sigmund Lessner’s House” is a western-style building constructed in the Meiji era (late 19 c). While its floor tiles used at the entrance porch were introduced in several publications, no details were mentioned. This is a brief report of our preliminary research conducted in February 2020 to record a detailed description. We found four types of ceramic tiles used, among which several types are made in Belgium and others are made in Japan. The made-in-Japan tiles are products of Awaji-seito factory of Awajishima (Hyogo prefecture) that are not well-known even among the study of industrial history of ceramic tiles. Our research also discovered the floor tiles are so damaged that an engineering assistance to preserve the historical heritage is recommended.