- 著者
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熊谷 由理
深井 美由紀
- 出版者
- 独立行政法人国際交流基金
- 雑誌
- 世界の日本語教育. 日本語教育論集 (ISSN:09172920)
- 巻号頁・発行日
- vol.19, pp.177-197, 2009-03-19
- 被引用文献数
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本稿では、クリティカル・リテラシーの概念がどのように日本語教育の教室活動に取り入れられるのかを、米国東部の大学における中級前半のコースで行われた実践を基に考察する。 外国語学習を通してものごとをクリティカル(批判的)に考える力を養うことは、外国語教育の目標の1つである。 批判的思考能力は 学習者の言語レベルに関わらず、言語運用能力を伸ばすのにかかせない要素である。なぜなら、自分の考えを自分の言葉で表現するためには、教師や教科書が提示する「知識」を単に受け入れるだけでは不十分であり、様々な情報を自らの知識や経験を基に分析・批判する力が必要だからである。 筆者は日本語学習にクリティカル・リテラシー活動を取り入れる試みとして、教科書の読み物の1つを書きかえるというプロジェクトを実施した。プロジェクトで使われたのは日本の学校制度についての読み物で、日本の教育制度の説明の後、アメリカの大学に関する記述がある。学習者は各自関連資料を集めて得た知識を教科書の読み物の内容と比較・分析し、クラス全体で話し合った後、それを基に協働で教科書の読み物をウィキを利用して書きかえるという作業を行った。この学習者が書き換えた読み物は、今後教科書に採用されることを目標としている。 本稿では、まずクリティカル・リテラシーの基本的概念を概観し、「教科書書きかえ」プロジェクトの作業手順を紹介する。そして、データ(話し合いの内容、書きかえたテキスト、アンケートによる学習者の意見等)を基に、その結果と可能性を報告・考察する。