著者
深沢 渓太 加茂野 有徳
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第27回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.73, 2011 (Released:2011-12-22)

【目的】継ぎ足歩行は検査などで広く用いられているが、訓練として行った時の効果ははっきりしていない事が多く、また客観的なデータも少ないと感じる。そこで本研究はは継ぎ足歩行を力学的に分析しどのような訓練効果が期待できるか3次元動作解析装置と筋電計を用い通常歩行と比較した。 【方法】対象は本研究に同意した下肢・体幹に障害のない健常男性3名とした。測定条件はまず6mの通常歩行(以下Normal)と6mの継ぎ足歩行(以下Tandem)を行ってもらい、動作解析装置と表面筋電計を用い動作解析を行った。測定機器は3次元動作解析装置(Vicon社製Vicon Nexus使用)、床反力計(AMTI社製)、表面筋電計を同期させ、解析ソフト(WAVE EYES)を使用しデータの解析を行った。マーカーは32点マーカーを貼付、筋電計の電極は腹斜筋・脊柱起立筋・中殿筋・大内転筋・内側広筋・大腿二頭筋・前脛骨筋・腓骨筋に貼付し、右下肢に統一した。尚、継ぎ足歩行の計測の際には床反力計の継ぎ目を境として1足ずつ足部が位置するようにするため15回の練習課題を実施し、歩行速度の指定は行わなかった。計測したデータから歩行周期に合わせて下肢関節角度・下肢関節モーメント・体幹角度・筋活動電位を解析しNormalとTandemの比較・分析を行った。比較肢は右下肢とした。 【結果】関節モーメントはNormalと比較しTandemでは小さく、Normalの半分以下の関節モーメントであった。床反力も通常歩行と比較して若干小さく、鉛直方向の床反力は体重の約100%前後を全歩行周期にわたって一定の値を示していた。筋電図はNormalと比較しTandemでは腹斜筋・中殿筋・大内転筋・内側広筋に特異的な波形を示しており、腹斜筋は歩行周期90%前後、中殿筋は歩行周期40~80%、大内転筋は歩行周期30~40%・80~90%にかけての二峰性、内側広筋は歩行周期30~50%にかけて大きな波形を示していた。また、胸郭と骨盤が同時に動いており、とくに胸郭側屈-骨盤側屈・胸郭回旋-骨盤回旋が大きな相互相関を示していた(r>0.90)。 【考察】継ぎ足歩行は歩行時に矢状面上での大きな関節モーメントを生じさせずに腹斜筋・中殿筋・大内転筋の筋活動を促す効果があると考える。床反力の急激な力の上昇も少ないことから関節へのストレスが軽減し、得に踵接地時に疼痛が出現する患者への有効性が示唆されるのではないかと考える。 【まとめ】本研究結果を実際の訓練へとフィードバックし、臨床での運動選択の一助としていき、実際の症例での検討も実施していきたい。