著者
佐藤 満 山下 和彦 仲保 徹 加茂野 有徳
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.465-473, 2020 (Released:2020-10-20)
参考文献数
49

【目的】体性感覚の低下は高齢者の転倒にも深く関与する。本研究は高齢者の足底触覚閾値を測定し,転倒事象との関連を明らかにする。【方法】通所介護施設の利用者110 名を対象に,高い刺激強度再現性を有する足底感覚計で足底触覚閾値を測定した。併せて下肢筋力など9 項目の心身機能を測定し,転倒群と非転倒群の間で比較した。さらに転倒を目的変数としたロジスティック回帰分析にて各変数のオッズ比を算出し,過去1 年間の転倒歴に対する足底触覚閾値の関連を検討した。【結果】転倒群と非転倒群との比較で足底触覚閾値,足関節背屈角度に有意差が認められた。性別比と疾患の有無で調整したオッズ比は足底触覚閾値と足関節背屈角度が有意であった。【結論】足底触覚閾値は高齢者の転倒を説明する変数として強い関連が認められた。要介護認定者の集団では転倒リスクの評価に従来の指標に加えて足底触覚閾値の測定が有効である可能性が示唆された。
著者
加茂野 有徳
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.141-146, 2020 (Released:2021-09-09)
参考文献数
26
被引用文献数
2

歩行補助に用いられる杖について,一般的に使用される一本杖(T 字杖)に絞って,その目的および作用から,杖を用いた歩行(以下,杖歩行)の効果を概説し,筆者らの行った杖歩行の力学的解析のための計測杖の作製と,それを用いた解析事例を紹介した.杖は,立位および歩行時のバランス保持と,免荷すなわち下肢荷重の軽減を目的に使用され,生体力学的安定をもたらし歩行運動を補助する.計測杖を用いた脳卒中片麻痺者の杖歩行時の左右脚の逆動力学解析により,下肢関節モーメント波形に麻痺側と非麻痺側の間で大きな非対称性があることと,リハビリテーション後に杖への依存が減少し麻痺側関節モーメント生成能力が増大することを示した.
著者
深沢 渓太 加茂野 有徳
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第27回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.73, 2011 (Released:2011-12-22)

【目的】継ぎ足歩行は検査などで広く用いられているが、訓練として行った時の効果ははっきりしていない事が多く、また客観的なデータも少ないと感じる。そこで本研究はは継ぎ足歩行を力学的に分析しどのような訓練効果が期待できるか3次元動作解析装置と筋電計を用い通常歩行と比較した。 【方法】対象は本研究に同意した下肢・体幹に障害のない健常男性3名とした。測定条件はまず6mの通常歩行(以下Normal)と6mの継ぎ足歩行(以下Tandem)を行ってもらい、動作解析装置と表面筋電計を用い動作解析を行った。測定機器は3次元動作解析装置(Vicon社製Vicon Nexus使用)、床反力計(AMTI社製)、表面筋電計を同期させ、解析ソフト(WAVE EYES)を使用しデータの解析を行った。マーカーは32点マーカーを貼付、筋電計の電極は腹斜筋・脊柱起立筋・中殿筋・大内転筋・内側広筋・大腿二頭筋・前脛骨筋・腓骨筋に貼付し、右下肢に統一した。尚、継ぎ足歩行の計測の際には床反力計の継ぎ目を境として1足ずつ足部が位置するようにするため15回の練習課題を実施し、歩行速度の指定は行わなかった。計測したデータから歩行周期に合わせて下肢関節角度・下肢関節モーメント・体幹角度・筋活動電位を解析しNormalとTandemの比較・分析を行った。比較肢は右下肢とした。 【結果】関節モーメントはNormalと比較しTandemでは小さく、Normalの半分以下の関節モーメントであった。床反力も通常歩行と比較して若干小さく、鉛直方向の床反力は体重の約100%前後を全歩行周期にわたって一定の値を示していた。筋電図はNormalと比較しTandemでは腹斜筋・中殿筋・大内転筋・内側広筋に特異的な波形を示しており、腹斜筋は歩行周期90%前後、中殿筋は歩行周期40~80%、大内転筋は歩行周期30~40%・80~90%にかけての二峰性、内側広筋は歩行周期30~50%にかけて大きな波形を示していた。また、胸郭と骨盤が同時に動いており、とくに胸郭側屈-骨盤側屈・胸郭回旋-骨盤回旋が大きな相互相関を示していた(r>0.90)。 【考察】継ぎ足歩行は歩行時に矢状面上での大きな関節モーメントを生じさせずに腹斜筋・中殿筋・大内転筋の筋活動を促す効果があると考える。床反力の急激な力の上昇も少ないことから関節へのストレスが軽減し、得に踵接地時に疼痛が出現する患者への有効性が示唆されるのではないかと考える。 【まとめ】本研究結果を実際の訓練へとフィードバックし、臨床での運動選択の一助としていき、実際の症例での検討も実施していきたい。