著者
吉田 甫 栗山 和広 添田 佳伸 宇田 廣文
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

この研究では、割合概念を対象にして、インフォーマルな知識を分析し、さらに学習中に遭遇する認知的障害の内容を同定することを目的とした。割合概念は、小学5年生で教えられる概念であるので、学習する前の子どもとして、小学4年と5年それぞれおよそ200名、学習後の子どもとして6年生150名をそれぞれ対象にした。インフォーマルな知識としては、割合の意味に関するもの(100をベースにしていることと部分-全体に関わること)、量的な表象に関すること、および割合概念としての第2用法に関する知識などを検討した。割合の意味と量的な表象に関しては、割合を学習する以前の子どもでも、40〜80%の子どもが、かなり性格に、部分-全体に関する知識やその意味などを理解しており、さらに量的な大きさについても、学習が終わった6年生とまったく差がないほどの豊かなインフォーマルな知識をもっていることが、見いだされた。さらに驚いたことに、割合の第2包容、中でもある量の90%を求めるといった公式に依存しなければ解決することは不可能と思われる問題でさえも、準正等も含めれば、学習する以前の40%もの子どもが、適切に解決することができた。学習中に遭遇する認知的障害については、まず割合の公式で用いられる「比べる量」と「基にする量」といった用語を理解していない子どもが多いことが示された。割合の公式を利用するさいにもっとも重要な用語を理解していないことから、当然のごとく、彼らは割合を解決することができなかった。さらに、%を「比べる量」と「基にする量」と混同する子ども、20〜30%も存在した。こうした困難性のためか、学習が終わった子どもで、教室で指導された割合の公式を使って問題を皆生する子どもは、わずか7%しないないという驚くべき事実も、見いだされた。