著者
栗山 和広 吉田 甫
出版者
宮崎女子短期大学
雑誌
宮崎女子短期大学紀要 = Bulletin of Miyazaki Women's Junior College (ISSN:02898748)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.57-69, 1991-03

This developmental study examined acquisition process of the concept of fractions and relationships of the concept. A total of 161 children have been administrated six tests over 3 years. Two principle incorrect strategies were found concerning the magnitude of fractions. The first was Rule A, in which children ordered the fractions with a larger numerator as a smaller magnitude in problems with the S-D type. Another was Rule B, in which children ordered the fractions with larger denominators as a greater magnitude in the D-S type. Change processes of these strategies suggested four process of acquiring the concept of fractions. In addition, it was shown that the process of the acquisition of the magnitude of fractions was different from acqusition process of other sub-concepts in fractions. These results were discussed in terms of the process of the integration of the concept of fractions to knowledge of the decimal number system.
著者
栗山 和広 吉田 甫
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.287-294, 1988-12-31 (Released:2010-07-16)
参考文献数
20
被引用文献数
1 2

Representation of preschool children's number concepts was investigated in the present study by giving children forward and backward counting problems. In backward counting, children performed significantly better with a type of Below 5 problem compared to a type of Over 5 problem. Analyses of counting errors revealed an absence of random errors in Below 5 problems but such errors were observed with Over 5 problems, Children were able to stop correctly at point “5” in forward counting but failed to stop at points other than “5” in forward counting. These results suggested that preschool children may represent numbers up to and including 5 as a firm structure or privileged anchor for numbers below 10. Results were discussed in terms of a mental number line in a representational system of numbers.
著者
吉田 甫 河野 康男
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.111-119, 2003
参考文献数
22

A new curriculum based on stundent's informal knowledge in ratio was established in the present study. The goal of this study was to examine the effect of the new curriculum on students' understanding of ratio. The ratio concept as a quantity rather than symbol operations was stressed in the new curriculum. In addition, the second term of proportion (b × p=a ; b : base quantity, p : proportion, a: quantity to be compared) was introduced first in the sequence of teaching three terms on ratio. Thirty-five students participated in eight lessons based on the new curriculum and 71 received normal lessons following the textbook. The students of the experimental group showed significantly superior performance over the textbook group (control group) in solving ratio problems. Although computational strategy was used in the textbook group in problem solving, an estimation strategy was mainly adopted in the experimental group. These results are discussed from the viewpoint of curriculum based on informal knowledge in children.
著者
吉田 甫 孫 琴 土田 宣明 大川 一郎
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.85, no.2, pp.130-138, 2014
被引用文献数
1

The present study examined influences of reading aloud and performing simple calculation on the cognitive functioning of healthy elderly adults, based on the findings that these tasks activated the prefrontal lobe. The elderly adults' memory and inhibitory functions were assesed by Short-Term memory, CST, Stroop, and SRC tasks, before and after intervention for 18 months. The study found that the learning group had significant improvement from the pre- to the post-test for the short-term memory, STM, CST, and Stroop tasks. On the other hand, there was significant decline over the 18 months in the control group which was given only the assessment tasks. These results are discussed in terms of the effectiveness of cognitive training.
著者
吉田 甫 栗山 和広 添田 佳伸 宇田 廣文
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

この研究では、割合概念を対象にして、インフォーマルな知識を分析し、さらに学習中に遭遇する認知的障害の内容を同定することを目的とした。割合概念は、小学5年生で教えられる概念であるので、学習する前の子どもとして、小学4年と5年それぞれおよそ200名、学習後の子どもとして6年生150名をそれぞれ対象にした。インフォーマルな知識としては、割合の意味に関するもの(100をベースにしていることと部分-全体に関わること)、量的な表象に関すること、および割合概念としての第2用法に関する知識などを検討した。割合の意味と量的な表象に関しては、割合を学習する以前の子どもでも、40〜80%の子どもが、かなり性格に、部分-全体に関する知識やその意味などを理解しており、さらに量的な大きさについても、学習が終わった6年生とまったく差がないほどの豊かなインフォーマルな知識をもっていることが、見いだされた。さらに驚いたことに、割合の第2包容、中でもある量の90%を求めるといった公式に依存しなければ解決することは不可能と思われる問題でさえも、準正等も含めれば、学習する以前の40%もの子どもが、適切に解決することができた。学習中に遭遇する認知的障害については、まず割合の公式で用いられる「比べる量」と「基にする量」といった用語を理解していない子どもが多いことが示された。割合の公式を利用するさいにもっとも重要な用語を理解していないことから、当然のごとく、彼らは割合を解決することができなかった。さらに、%を「比べる量」と「基にする量」と混同する子ども、20〜30%も存在した。こうした困難性のためか、学習が終わった子どもで、教室で指導された割合の公式を使って問題を皆生する子どもは、わずか7%しないないという驚くべき事実も、見いだされた。
著者
吉田 甫 川那部 隆司
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、自閉症を引き起こす主な原因と見なされている前頭葉機能への賦活をおこない、こうした訓練が認知機能などへの効果を及ぼすかどうかを検討した。11年度は、前頭葉を賦活するための課題である音読と易しい計算の教材を主に作成した。12年度は、小学2年と3年の自閉症男児を対照として、1セッション10分の訓練で、1週間に4~5回、1年間にわたって継続した。その結果、訓練群では、FABで1年後に明らかな上昇が観察された。13年度は、自閉症児において他者の感情の理解が訓練によって改善されるかどうかを中学生5人を対象にして検討した。顔表情認知課題では、4人で事前から事後にかけての能力に上昇が認められた。
著者
川野 日郎 原 義彦 上條 秀元 平瀬 清 吉田 甫 草野 勝彦 NAKASONE Rau FINKEL Donal FIKSDAL Susa SMITH Barbar 堀 和郎
出版者
宮崎大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

本研究グループは、これまで3年にわたって大学におけるリカレント教育(生涯学習)の推進についてアメリカのエヴァグリーン州立大学(TESC)と情報交換・共同研究を行ってきた。本年度は代表者川野と協力者小林がTESCを訪ね研究のまとめを行った。TESCでは州に提出される報告書(Portfolio)をもとに教育や評価について詳細な説明を受けた。TESCの理念は、(1)大学の主目的は教育である,(2)個人学習よりも共同学習、共有学習が優れている,(3)受動的に知識を習得させるのではなく、自ら主体的に学ぶ姿勢(Active learning)を育てる教育を旨とする,(4)専門分野を個別ではなく総合的に関連づけて理解させる,(5)習得した知識は現実に適用されて初めて理解されたと云える,となっている。このような理念の実践のためカリキュラムや評価まで大学全体が組織立てられている。通常の専門教育は行われず全ての授業がそれぞれ一つのプログラムのテーマに沿った構成要素になっている。そして授業内容も徹底した横断的・総合的内容になっている。総合的教育のネックは、学生の成績評価であるが、これについても教官及び学生それぞれの立場からの評価を総合し、極めて綿密で行き届いた論述による評価方式をとっている。こうした大学の教育にかける努力には実に注目に値するものがあった。共同研究では、本来大学の使命は教育と研究であるとするわれわれと種々の点で意見の分かれるところがあったが、TESCは少なくとも教育の面については先進的であり、極めて有用な知見を得ることが出来た。本学の新しい大学教育を考えるとき研究と教育の調和をいかに図るかが大きな課題と考える。生涯学習に関しては、TESCの場合、大学教育そのものが生涯学習の一環であるといえる。大学では専門知識をそのまま直接教えるのではなく、知識の獲得の仕方、使い方を学ぶ、これは将に生涯学習者の育成である。生涯学習の制度的側面など比較研究については、未だ十分な結果は得られていないが、アンケートによる意識調査の結果によると、学生・教官ともに生涯学習に関する意識は高いことがわかった。