著者
清尾 康志
出版者
東京工業大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2017-04-01

生体分子の多くはリンを含み、何故リンが生命の必須元素になったのかを理解することは生命起源を知る上で重要である。冥王代の地球ではリンはシュライバーサイト[Fe3P]として存在していた。Fe3Pは水と反応し様々な還元的リン化学種を生成する。また、リボヌクレオチドと反応し、2', 3'-AMPも生成する。本研究では、冥王代のFe3Pの役割をさらに解明するためにFe3PやFe3P由来リン化学種と様々な生体分子との反応を調べた。特に、アミノ酸、糖、グリセルアルデヒド等との反応生成物を解析し、これら生成物から複雑な生命分子や代謝反応が誕生した可能性を明らかにするための実験を行った。その結果、シュライバーサイトから生成するピロ亜リン酸(H4PO5)はpH9程度の弱アルカリ性の条件下、セリン、チロシン、トレオニンなどのアミノ酸の側鎖に存在する水酸基、リボース、グリセルアルデヒドなどの炭水化物の水酸基と反応し、対応する亜リン酸モノエステルを与えることを31P-NMRにより明らかにした。また、生成した亜リン酸エステルが酸化されてリン酸エステルに変換される可能性を検証するために、種々の酸化反応を検討したところ、ペルオキソ二硫酸カリウムなどの酸化剤やパラジウムなどの金属触媒の存在下、亜リン酸モノエステルからリン酸エステルが生成することを明らかにした。以上の結果より、冥王代において比較的穏和な条件下、シュライバーサイト由来リン化学により、様々な生体分子の亜リン酸モノエステルやリン酸エステルが生成する可能性が示された。
著者
清尾 康志
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-11-18

本研究では独自に開発した人工核酸の特性を活用した新しいmiRNA検出技術の開発を、有機合成化学と核酸検出技術を融合して開発した。まず、既に開発していた人工核酸dAChcmPNAの短鎖RNA選択的結合能をさらに高めるために化学構造を改変した第二世代の修飾核酸の開発を行い新規RT-PCR法への応用を目指した研究を行った。また、蛍光残基で修飾した人工核酸の合成法の開発と蛍光特性の評価を行い、短鎖RNAの蛍光イメージングプローブとしての開発を目指した研究を行った。さらにではdAChcmPNA をスライドグラスに固定化した短鎖RNA選択的microarrayを開発するための基礎技術の開発を検討した。