著者
清水 亀平次 後藤 仁 三宅 勝 小野 斉
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.160-170, 1965-03-25

昭和38年10月より翌年3月にわたり十勝,釧路,根室,北見など道東地区の専業酪農家各3〜6カ所の乳牛計198頭788分房について異常乳発生実態と改善に関する調査研究を行なった。その概要は次のごとくである。1)異常乳(C.M.T.+以上でかつ細胞数50万以上)の発生は最高が釧路の54.8%,最低が根室の19.2%,平均32.1%でC.M.T.++以上で細胞数100万以上の高度異常乳がこのうちの57.3%を占ぬていた(第5表)。2)異常乳295分房の細胞培養結果,ブドウ球菌が最も多く27.5%,レンサ球菌,混合(レンサ球菌あるいはブドウ球菌とミクロコッカスが主体),ミクロコッカス,その他の菌(コリネバクテリウム,大腸菌,枯草菌,カビ)の順にそれぞれ21.4%,17.9%,5.1%,3.4%で菌検出陰性は24.7%であった(第9表)。3)異常乳から検出されたブドウ球菌は正常乳由来のそれにくらべCoagulase陽性菌が多く,レンサ球菌ではB群レンサ球菌(Str. agalactiae)が大部分を占めていた(第10表)。4)細菌培養所見と最もよく合致したのは牛乳内細胞数でC.M.T.,N.F.T.,B.T.B.テスト,異常乳試験紙の順に感度が低下した。B.T.B.テスト,異常乳試験紙では反応陰性の中に高度異常乳が相当含まれるのがみられた。従って細胞数,C.M.T.の成績を勘案して異常乳を判定する方法が簡易で信頼度が大きい(第2,3,4表)。5)異常乳治療のため7通りの薬剤による治療試験を実施した。このうち複合ストレプトマイシン100mgとペニシリンGナトリウム10万単位またはこれらにPVP 100mgを添加したものを5%ブドウ糖水溶液50mlに溶解し,搾乳後の乳槽内にただ1回注入するだけで前者にあっては34.4%,後者にあっては35.3%が異常乳から正常乳えと改善され,これらの効果は1%以下の危険率で有意であった(第11表)。終りに本調査研究の実施に当りご協力を頂いた関係教室所属学生各位ならびに分離菌株の諸性状検査に終始援助くだされた岡重美,藤堅太郎の両君に感謝する。また治療試験に当り薬品を提供してくださった武印薬品工業KKならびに三共製薬KKに深謝します。なおこの研究は昭和38年度北海道総合開発企画部の委託研究費によって行なわれたものである。
著者
平野 稔泰 小川 美敬 後藤 仁 清水 亀平次 野呂 新一 桜田 教夫
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.633-638, 1985-08-15

1980〜83年に, 北海道帯広市の十勝総合食肉流通センターで収集したブタ血清3,701例について, 香港型(H3N2)インフルエンザウイルスに対する抗体調査を行った. 1980〜82年では抗体陽性率は0.7〜7.4%で, 1980年には7〜8月に集中して陽性血清が認められた. これらのブタは屠殺時に7か月齢であり, 同年1〜3月に帯広地区学童間に確認されたH3N2ヒトインフルエンザウイルス流行時に若齢豚への感染がおこったものと考えられた. 一方, 1983年には3月に抗体陽性例が出現し, 3〜7月を通じて高率(4.8〜53.4%)に陽性例が認められ, 同年1〜3月におこったH3N2ウイルスのヒトにおける流行時に成豚も含めてブタが感染したことが示唆された.