著者
清水 喜允 内田 亮
出版者
公益社団法人 日本気象学会
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.289-299, 1974
被引用文献数
8

日本海側の沿岸平野部の大雪と関連するうず状エコーの形成過程の研究が,適切な局地集中降雪の予報のために必要である.日本海で観測される雪のエコーパターンは,吹出し初期のランダムな対流セルの分布,最盛期の一般流に平行な縦整列線エコー,衰弱期の横整列線エコー,そして稀ででるがうず状エコーが特徴的である.<br>整列した線エコーパターンは多くは一般流に平行で,線エコー相互の間隔は平均30kmでエコー頂高度の約10倍であった.この結果は浅井(1968)の,バンド状雲列の間隔に関する理論的結論を支持する.<br>うず状エコーの観測される条件は,いわゆる里雪大雪の綜観場であるが(宮沢1967),著者は地上気圧場の日本列島に位置する曲率半径100km程度のシャープなリッジが存在し,風の鉛直シアーの場に著しい変化があることを指摘する.<br>二例の観測によって,うず状エコーは西から東にのびるバンドエコーに,北東から南西に走向する線エコーが斜交するとき,うえに述べた綜観場の中で形成されることがわかった.数個の高い対流セルが反時計廻りに回転し,リング状となり,うず状エコーの中心の眼になることが指摘される.