著者
西田 圭吾 内田 亮太
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.54, no.7, pp.675-679, 2018 (Released:2018-07-01)
参考文献数
16

亜鉛は生命活動に必要とされる必須微量金属元素の1つであり、1960年代に相次いで報告された亜鉛欠乏症が契機となって様々な生体機能における亜鉛の関与が示されている.亜鉛の恒常性は亜鉛トランスポーターやメタロチオネインによって制御されており、主として遺伝子ノックアウトマウスを用いた一連の研究によって哺乳類の初期発生、全身成長、生体防御機能などにおける亜鉛の恒常性の意義が分子レベルで明らかになりつつある.一方、外傷や感染症で皮膚の表皮層が壊されると、止血と炎症から始まる極めて複雑な一連の生体反応が起こる.その治癒にいたるまでの過程を皮膚創傷治癒という.この皮膚創傷治癒に、亜鉛がポジティブに制御していることは古くから知られていた.しかしながら、具体的に亜鉛が皮膚創傷治癒の過程にどのような役割を担っているか十分に理解されていなかった.今回、マスト細胞が放出する亜鉛が皮膚創傷治癒を制御する新しい機序に関して、著者らの研究グループで得られた知見を中心に紹介する.
著者
芳川 満輝 内田 亮 黒木 巽 三熊 敏靖 蛭田 勇樹 永田 佳子 金澤 秀子
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.173-179, 2016-04-05 (Released:2016-05-10)
参考文献数
11
被引用文献数
1

Recently, the need for the analysis of psychotropic drugs has increased. With the revision of the medical treatment fees in FY2014, facilities that can be calculated in those case that could identify the drugs responsible for acute drug poisoning of a patient by instrumental analysis, including HPLC analysis, were expanded from only advanced emergency medical care centers (30 facilities nationwide) to emergency medical care centers (263 facilities nationwide). Since the responsible drugs can include barbiturate drugs used as antiepileptics and tricyclic drugs used as antidepressants, methods to analyze psychotropic drugs are needed. Moreover, in emergency medicine, it is necessary to quickly identify the cause of acute drug poisoning. Ultra-high-speed HPLC has become increasingly popular in analytical research fields. In this study, we investigated the analysis of psychotropic drugs using an ultra-high-speed HPLC system. The HPLC utilized in this study was a ChromasterUltra Rs system (Hitachi, Tokyo, Japan) equipped with a photodiode array detector. Using a LaChrom Ultra C18 column (particle size; 1.9 μm) as the analytical column, rapid and simultaneous analysis of 14 psychotropic drugs (five barbiturates, three benzodiazepines, five tri- and tetracyclic antidepressants, and trazodone) was achieved within 5 min.
著者
安藤 寿康 内田 亮子 長谷川 寿一 大野 裕 神庭 重信
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2001

研究実施・運営上の主な実績は以下の通りである。(1)双生児レジストリの拡大:神奈川県、千葉県を中心に住民基本台帳から地域の双生児の悉皆的住所調査を行って住所リスト(レジストリ)を拡大し9000組のデータを得た。これにより、東京都その隣接県の主要地域をカバーする規模の大きな双生児研究を実施する基盤が整備されたと言える。(2)双生児サンプルの拡大と維持:上記のレジストリに基づいて調査への参加を呼びかけ、新たに約500組の青年期双生児の新サンプルを得、双生児被験者の数は800組を超した。またこれまでに協力してくれた双生児の親からも、養育態度、社会的態度に関する双生児の親からもデータを収集した。これにより、養育態度や社会的態度の家族内伝達に関する遺伝と環境の構造に関する研究が可能となった。(3)データの追加と収集:旧サンプルから新たに事象関連電位{作動記憶、情報処理測度、個別式知能検査(WAIS)のデータを、また新サンプルからは質問紙による卵性診断、と各種パーソナリティや摂食行動などに関するデータを入手した。これにより、より信頼性の高い遺伝率や遺伝と環境の構造のモデル探索が可能となった。これらの分析には構造方程式モデリングによるモデル適合を行った。(4)脳波解析プログラムの開発、脳波測定環境の改善:現在の測定状況に適合した特別の脳波解析プログラムを開発するとともに、正確な脳波測定のためにシールドルームを設置した。これは予定外の都合により脳波測定を行う実験室の場所の移動を余儀なくされたためであったが、結果的に実験条件の改善に寄与することとなった。
著者
内田 亮 千葉 伸太郎 徳永 雅一 森脇 宏人 森山 寛
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.473-478, 2002-12-15 (Released:2011-03-18)
参考文献数
7

睡眠時のいびき, 無呼吸を主訴として受診した患者のうち, 精査にて舌扁桃の著明な肥大がその原因と考えられた5症例 (男性4例, 女性1例) に対し, 舌扁桃切除術を施行した。そのうち2症例 (男性) は両口蓋扁桃摘出術も同時に施行して改善し, 残る3症例は自他覚所見とも改善が得られた。全例で睡眠時無呼吸低呼吸指数 : AHI, 及び動脈血酸素飽和度 : SaO2の改善は認められたが, うち1例は睡眠時無呼吸指数 : AI, 睡眠内容や日中過眠の改善には至らなかった。舌扁桃肥大による睡眠呼吸障害はその程度のわりには睡眠障害が強く出現する傾向にあり, 努力性呼吸のパターンになると考えられた。舌扁桃切除術は, あらかじめ気管切開を行う方が安全と思われるが, 超音波メスを用いることで, 出血や術後の腫脹も軽減でき, 気管切開を行わないなど侵襲が少なく, 患者にとって利点が多いと考えられた。
著者
清水 喜允 内田 亮
出版者
公益社団法人 日本気象学会
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.289-299, 1974
被引用文献数
8

日本海側の沿岸平野部の大雪と関連するうず状エコーの形成過程の研究が,適切な局地集中降雪の予報のために必要である.日本海で観測される雪のエコーパターンは,吹出し初期のランダムな対流セルの分布,最盛期の一般流に平行な縦整列線エコー,衰弱期の横整列線エコー,そして稀ででるがうず状エコーが特徴的である.<br>整列した線エコーパターンは多くは一般流に平行で,線エコー相互の間隔は平均30kmでエコー頂高度の約10倍であった.この結果は浅井(1968)の,バンド状雲列の間隔に関する理論的結論を支持する.<br>うず状エコーの観測される条件は,いわゆる里雪大雪の綜観場であるが(宮沢1967),著者は地上気圧場の日本列島に位置する曲率半径100km程度のシャープなリッジが存在し,風の鉛直シアーの場に著しい変化があることを指摘する.<br>二例の観測によって,うず状エコーは西から東にのびるバンドエコーに,北東から南西に走向する線エコーが斜交するとき,うえに述べた綜観場の中で形成されることがわかった.数個の高い対流セルが反時計廻りに回転し,リング状となり,うず状エコーの中心の眼になることが指摘される.
著者
内田 亮輔 平田 達也 鈴木 克則 福島 宏司 西館 啓介 久保寺 俊和 巽 瑛理 石井 将人 安孫子 德章
出版者
日本法科学技術学会
雑誌
日本法科学技術学会誌 (ISSN:18801323)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.125-138, 2016 (Released:2016-07-23)
参考文献数
5

Strange shaped fired bullets were found in a suicide case. While one fired casing was found in the cylinder of a Paltik revolver, one column-shaped fired bullet was found in the head of a dead man and one longer gourd-shaped fired bullet was found in the barrel of the Paltik revolver.  As a result of the gunfire test with revolvers and round-nose-cartridges, firing the revolver with a lodged (first) bullet and propellant powder in the barrel, the first bullet became column-shaped and the next bullet became a longer gourd-shaped. We had carried out X-raying the bullet's collision in the barrel, and we found out that the bullets had deformed in the barrel within a very short time. In the gunfire test, the amount of propellant powder in the barrel was larger than that in the next cartridge, so by regulating the amount of propellant powder, the velocity of the next bullet was reduced.
著者
内田 亮子
出版者
認知神経科学会
雑誌
認知神経科学 (ISSN:13444298)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.9-15, 2010 (Released:2011-07-14)
参考文献数
33

言語能力の起源と進化を考察する際、現在の機能とメカニズムとともにその歴史性の解明も重視されなくてはならない。他の生物現象同様、ヒトの脳とそれが可能にする言語能力も妥協の産物である。言語が現れるにいたった過程と、言語獲得によって失ったものや新たに対処しなければならなくなった課題の解明は、言語のより深い理解につがなるはずである。本稿では、言語獲得と関連が高いと考えられる現代人的な脳の使い方と生き方が、人類進化の歴史の中で、いつごろ、どのように現れてきたのかについて生物人類学的知見をもとに概観する。