著者
渡瀬 久也 小口 忠清 堀川 精一 佐々木 えつ子
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.69-72, 1978

草木染は趣向性に富んだ色彩をだすことができるため, 紬 (つむぎ) などの伝統織物に多く用いられているが, 発色, 染着あるいは染色堅ろう度増進のため, おもに金属塩が染色助剤として用いられる.そのなかには絹繊維に著しい質的劣化をおこさせるものがあるので, 本試験では染色助剤と絹繊維のぜい化性との関係について主として強力および伸度を中心にして追究した.染色助剤として代表的な硫酸アルミニウムカリウム, 重クロム酸カリウム, 塩化第ニスズおよび木酢酸鉄を, また染料としてすおう, 楊梅 (皮) およびコチニールを用いて実験し, つぎのような結果を得た.<BR>(1) 染色助剤の種類によるぜい化の程度のちがいは, 光照射を行なうことにより顕著となった.<BR>(2) 光照射によるぜい化は, スズ助剤が最もはげしく, クロム助剤が最も緩慢であった.<BR>(3) 処理回数の増加により, また光照射時間の増加によりぜい化は促進された.<BR>(4) ぜい化の程度は, 助剤のpHよりもその溶液に含まれる金属の種類と量に影響されるようである.<BR>(5) 染料問のぜい化の差異は見られないようである.
著者
木下 晴夫 菅沼 よし 渡瀬 久也
出版者
The Japanese Society of Sericultural Science
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.352-358, 1980

煮繭工程内の処理効果は互に関連しあっているので特定要因を独立に変動させても的確に工程を制御するとは必ずしも期待できない。そこで, 回帰主成分分析法により煮繭要因を集約して少数の煮繭温度パターンを決定することについて検討した。その結果の大要は次のとおりである。<br>1) 煮繭要因は3個の互に独立な回帰主成分に集約された。<br>2) 第1回帰主成分は浸漬部温度および触蒸部温度の影響が大きく, 繭層セリシンの膨潤程度の均一化をはかる温度パターンで, 特に大中節の個数および小節点に対して効果が大きい。<br>3) 第2回帰主成分は滲透部温度の影響が大きい。<br>4) 第3回帰主成分は触蒸部温度あるいは調整部温度の影響が大きい。<br>5) 第2回帰主成分, 第3回帰主成分は中層・内層セリシンあるいは繭層セリシン全体の膨化や凝集をはかる温度パターンで, 特に糸故障や索抄緒効率に対して効果が大きい。<br>6) 繰糸成績より, 適正な温度パターンを選択し, 煮繭工程を制御することによって, 煮繭の最適パターンが形式化され, また単純化された。