- 著者
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小峯 和明
渡辺 匡一
池宮 正治
渡辺 憲司
- 出版者
- 立教大学
- 雑誌
- 基盤研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 1999
研究の推進に当たって、まず長年進めている琉球文学研究会メンバーを協力者として要請し、初年度に沖縄で研究会を開催、各自の研究テーマと琉球文学研究とのすりあわせを行い、研究組織の拡充をはかった。当初の目的にしたがい、本土との交流もふまえた総合的体系的な琉球文学の総合目録作成をめざし、初年度にハワイ大学ホーレー文庫調査を試みたが、図書館側の事情もあり、思うように進捗しなかったため、テーマを各自の研究課題とあわせてしぼることとし、最終的に琉球の中世と近世の一大転換点である薩摩藩の侵攻、いわゆる島津入りに焦点を集約し、「薩摩藩侵攻前後の文学言説をめぐって」という研究テーマを確立した。これは従来まったくみられない斬新かつ重要なテーマであり、島津入りの数年前に琉球に滞在した袋中の著述『琉球神道記』『琉球往来』、島津侵攻を物語化した『薩琉軍記』、本土から往還した僧の『定西法師物語』、近世期の遊女・遊郭の起源伝承等々、多角的多面的ななテーマ設定が可能になった。『琉球神道記』をのぞいてはいずれも本格的な研究がなされておらず、伝本調査をはじめ、基礎的な研究からはじめ、ひとまず研究の方位を見定める地点で時間切れとなった。『琉球往来』に関しては従来の活字翻刻を一新する伝本を再発見し、詳細な本文校訂と注釈によって、一気に古琉球をうかがう資料としての価値が高まった。『琉球神道記』は近年の中世神道系の研究動向をふまえた注釈のための基礎資料集を作成、『薩琉軍記』は錯綜する伝本を整理し、かつ写本二種を購入、基礎的な研究をスタートさせた。『定西法師物語』も詳細な伝本研究と注釈研究を始動させ、遊女伝承も従来解明されていない領域にはじめて本格的な考証が加えられた。以上のように、基礎的な研究に終始したが、従来琉球文学といえば、無文字のシャーマニックな古代的なイメージが強かったのを完全に払拭し、あらかな研究の地平を開拓することができた。本研究をもとになるべく早く成果を公刊したいと考えている。