著者
小峯 和明
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.141, pp.81-96, 2008-03-31

十二世紀(院政期)における天皇の生と死をめぐる儀礼とその記録や仏事儀礼に供された唱導資料(願文・表白)を中心に検証する。死に関しては堀河院をめぐって、関白忠実の日記や女官の日記、大江匡房の願文などから取り出し、とりわけ追善法会における願文表現の意義を追究した。生に関しては安徳天皇の誕生を例に、中山忠親の日記、『平家物語』諸本、安居院澄憲の表白、密教の事相書、御産記録等々から検討した。
著者
松野 陽一 長谷川 強 山崎 誠 鈴木 淳 小峯 和明 岡 雅彦 新藤 恊三 松野 陽一
出版者
国文学研究資料館
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1990

古典籍の成立事情と書写伝流の経路を究明する上で、写本の巻末に記載される奥書・識語を収集して、これを整理することは極めて重要、かつ有効な方法である。国文学研究資料館文献資料部では、可能な限り広範な古典籍の奥書を集成し、研究することに着手したが、2年間にわたる本研究において得られた具体的な成果は、以下に記すとおりである。1.国文学古典籍は日本各地の文庫・図書館等に所蔵されるが、質、量ともに豊富で、本研究の目的に合致するものとして、宮内庁書陵部本6,300点と陽明文庫本3,400点とを対象にして、奥書を抽出した。2.記載年時の明示されない奥書は、書写者の生没年時など周辺の事項から推定するなどして、抽出した奥書を年代順に配列して、文庫別にデ-タファイルに蓄積した。3.集成した奥書デ-タを、ジャンル別、作品名別、奥書記載者別などいくつかの要素に分析して、サンプリングデ-タの作成を試みた。4.サンプリングデ-タの一具体例として、文庫形成の面で独特の蔵書構成を示す真福寺本の奥書を悉皆調査して、書名による分析を通して書名索引を作成した。その成果は「研究成果報告書」に掲載した。5.奥書集成の具体例として、藤原俊成の家集『長秋詠藻』の諸本の奥書を写真版で収集し、書承経路をつきとめた。この作業では対象を書陵部本と陽明文庫本に限定せず、諸本を博捜して目的を達成することに務めた。この成果も「研究成果報告書」に掲載することができた。
著者
小峯 和明 渡辺 匡一 池宮 正治 渡辺 憲司
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

研究の推進に当たって、まず長年進めている琉球文学研究会メンバーを協力者として要請し、初年度に沖縄で研究会を開催、各自の研究テーマと琉球文学研究とのすりあわせを行い、研究組織の拡充をはかった。当初の目的にしたがい、本土との交流もふまえた総合的体系的な琉球文学の総合目録作成をめざし、初年度にハワイ大学ホーレー文庫調査を試みたが、図書館側の事情もあり、思うように進捗しなかったため、テーマを各自の研究課題とあわせてしぼることとし、最終的に琉球の中世と近世の一大転換点である薩摩藩の侵攻、いわゆる島津入りに焦点を集約し、「薩摩藩侵攻前後の文学言説をめぐって」という研究テーマを確立した。これは従来まったくみられない斬新かつ重要なテーマであり、島津入りの数年前に琉球に滞在した袋中の著述『琉球神道記』『琉球往来』、島津侵攻を物語化した『薩琉軍記』、本土から往還した僧の『定西法師物語』、近世期の遊女・遊郭の起源伝承等々、多角的多面的ななテーマ設定が可能になった。『琉球神道記』をのぞいてはいずれも本格的な研究がなされておらず、伝本調査をはじめ、基礎的な研究からはじめ、ひとまず研究の方位を見定める地点で時間切れとなった。『琉球往来』に関しては従来の活字翻刻を一新する伝本を再発見し、詳細な本文校訂と注釈によって、一気に古琉球をうかがう資料としての価値が高まった。『琉球神道記』は近年の中世神道系の研究動向をふまえた注釈のための基礎資料集を作成、『薩琉軍記』は錯綜する伝本を整理し、かつ写本二種を購入、基礎的な研究をスタートさせた。『定西法師物語』も詳細な伝本研究と注釈研究を始動させ、遊女伝承も従来解明されていない領域にはじめて本格的な考証が加えられた。以上のように、基礎的な研究に終始したが、従来琉球文学といえば、無文字のシャーマニックな古代的なイメージが強かったのを完全に払拭し、あらかな研究の地平を開拓することができた。本研究をもとになるべく早く成果を公刊したいと考えている。
著者
小峯 和明 渡辺 憲司 米井 力也 増尾 伸一郎
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

1国内のキリシタン文学関連の資料調査と収集立教大学海老沢文庫の前近代及び明治期のキリシタン文学関連資料の悉皆調査を行い、書誌データをまとめた。また、上智大学キリシタン文庫の前近代及び中国を中心とする東アジアのキリシタン文学関連の資料調査を行い、書誌データをまとめた。沖縄のキリシタン文学関係の調査及び踏査を行った。2海外のキリシタン文学関連の資料調査と収集パリ国立図書館の中国を主とするキリシタン文学関連の資料調査を行い、目録を整備し、書誌データをまとめ、伝本研究を行った。また、韓国教会史研究所、ソウル大学の朝鮮時代のキリシタン文学関連の資料調査を行い、伝本研究を行った。3海外における国際シンポジウムの開催アルザス日本学研究所で「キリシタン文学と日欧交流」のテーマで国際シンポジウムを行った。また、韓国外国語大学で「東アジアの日本文学研究」のテーマで国際シンポジウムを行った。以上、日本と西洋との一対一対応にとどまらない東アジアにまたがる多面的な次元でのキリシタン文学・文化の様相が解明できた。キリシタン文学を軸にひろく東西交流文学を対象とする新しい領域が開拓でき、海外の研究者との共同研究の体制も確立し、今後の研究推進のおおきな足がかりを得られた。
著者
荒野 泰典 上田 信 老川 慶喜 藏持 重裕 小峯 和明 千石 英世
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

国内外に点在する捕鯨関連の史跡・資料を調査し、分担者および各地の協力者と共同研究を展開することによって以下の成果を得た。1.捕鯨という現象を人と鯨の関係性としてより広くとらえ、捕鯨史を人類史の不可欠の一環として見る視点を得た。2.捕鯨にまつわる諸言説の再検討を行った。たとえば、日本の伝統捕鯨が、日本で独自に発達したという言説の再検討。17世紀のオランダ・英国の東インド会社の日本関係史料に見られる、鯨油の大量輸出の事例や、日本側の史料のオランダの捕鯨技術の導入に関する記述の検討を通じて示唆した。また、従来の「捕鯨」の研究は、日本や欧米に限られる傾向があり、それが捕鯨研究を特殊な研究分野にとどめていた。日本以外の朝鮮・ベトナムの捕鯨を取りあげて、東アジア地域でも捕鯨は十分検討に値する課題であることを示した。3.捕鯨が、経済のみでなく、社会的文化的にも人々の生活や意識に深く浸透していたことを、岸壁画・神話・文学・鯨絵巻類の検討を通じて、明らかにした。4.捕鯨関連史料の収集作業を通じて、従来地元以外では見過ごされがちであった史料を鯨研究に利用するための環境を整えた。具体的には、壱岐郷土館、鯨賓館ミュージアム(江口文書)、対馬歴史民俗資料館(郡方毎日記)、太地くじらの博物館などの関連史料の目録化や翻刻を行った。
著者
小峯 和明
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
アジア新時代の南アジアにおける日本像 : インド・SAARC諸国における日本研究の現状と必要性
巻号頁・発行日
pp.45-55, 2011-03-25

アジア新時代の南アジアにおける日本像 : インド・SAARC 諸国における日本研究の現状と必要性, ジャワハルラル・ネルー大学, 2009年11月3日-4日
著者
小峯 和明
出版者
中世文学会
雑誌
中世文学 (ISSN:05782376)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.29-37, 1999 (Released:2018-02-09)
著者
小峯 和明
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.18-28, 1998

模倣の意義について、中世の文芸や絵画を中心に、文字テキストにおける写すこと(現前化)と移すこと(自己化)の対応、定家様に代表される様式化への展開、権威の名を騙り仮構することで想像力を発揮する擬作や擬書の意義、似せ絵と偽せものの相関、絵巻や絵本における模写や模本の復権、語りをよそおう聞書きの口頭言語と文字言語の相剋、まねることを疑似化しつつ反転させる芸能のもどきやパロディ等々、多面的に論じた。
著者
小峯 和明
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国文学研究資料館紀要 = The Bulletin of The National Institute of Japanese Literature (ISSN:03873447)
巻号頁・発行日
no.14, pp.31-62, 1988-03-30

安居院流の唱導書の一である国文学研究資料館蔵『澄印草等』(鎌倉写)の紹介と翻刻。内容は安芸前司義盛逆修表白と養和二年二月の仁和寺宮五部大乗経供養(法会次第・表白)とからなる。前者は転法輪鈔(十二)密教上の一部に合致。台密の教義にもとづき、法華経と大日如来・両界曼陀羅との顕密不二を説く。後者は後白河院と守覚法親王が覚性法親王の菩提供養を仁和寺大聖院で行ったもの。吉記・玉葉によれば、講師は澄憲であり、この表白が彼の手になることが証明される。表白は対句の修辞を駆使した力作であり、院政期の法会文学として貴重であるばかりでなく、中世の文体形成の礎としても注目される資料である。 This is an introduction and a reprint of “Choin soto”(澄印草等)(reprinted in the Kamakura period) which is one of books of Agui school sermon stored in National Institute of Japanese literature. The contents consists of Hyobyaku (supplications) of gyakushu (holding a memorial service prior to one’s death) of Yoshimori, the former official of Aki Province and five teachings of Mahayana Buddhism memorial service in Ninnajinomiya (programs for the Buddhist mass・hyobyaku) in February, 1182. The former is equal to a part of “Tenborinsho”(転法輪鈔)(12) in esoteric Buddhism. Based on a doctrine of the esoteric Buddhism of the Tendai sect, it preached the nonduality of Kenmitsu between the Lotus Sutra and Dainichi Nyorai・Ryokai Mandara. Contents of the latter one is that Goshirakawa-in and Shukaku houshinno held a memorial service for Kakushohoushinno in Ninna-ji sanctuary. According to Kikki(吉記)・Gyokuyo(玉葉), a lecturer was Choken. It is proved that he wrote this hyobyaku. It is the masterpiece which made full use of the rhetoric of the couplet, and it is not only valuables as Buddhist ceremony literature of the Insei period, but also is the material which attracts attention as a foundation of the writing style formation of the Middle Ages.
著者
小峯 和明 渡辺 憲司 金 文京 増尾 伸一郎
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

日本中世の物語類を中心に、<予言文学>に関わる表現やモチーフの資料集を作成し、さらに予言書、未来記、託宣書、夢記、起請文、遺言、遺訓などの文書類のリストを作成、資料集としてまとめた。東アジアに関しては、北京、ソウル、ハノイ、パリ、ロンドン、ボストンなどで資料調査を行い、貴重な資料を収集した。それらの成果をもとに、北京、ハノイ、パリで<予言文学>をめぐる国際学会や研究会を主催し、論文集としてまとめた。