著者
田中 千晶 渡辺 哲司
出版者
日本運動疫学会
雑誌
運動疫学研究 (ISSN:13475827)
巻号頁・発行日
pp.2166, (Released:2023-03-31)

本報告の目的は,障害のある者やない者をともに含むすべての子供・青少年の身体活動促進に関する国際的な動向,および日本の現状を総括することである。今日では,子供から大人まで蔓延する身体不活動に対処するための取り組みが世界的になされている。そうした取り組みの理念的な基盤となり得るのが,地球上の「誰一人取り残さない」ことを誓うSustainable Development Goals(SDGs)である。また,世界保健機関(WHO)の行動計画やガイドラインなどは,SDGsの理念とその目標達成に貢献し得る。Active Healthy Kids Global Allianceが,子供・青少年の身体活動の促進と状況調査に世界規模で取り組んでいる。2016年以降,障害や慢性疾患を有する子供・青少年を対象としたデータもいくつかの国から報告されているが,まずは国内外の包括的なモニタリング・システムの開発こそが必要である。日本における既存の調査の主眼はスポーツ参加状況に置かれており,子供・青少年の日常生活全般の身体活動量がわかるデータはほとんど無い。さらに,障害を有する子供・青少年は,同年齢の健常な人たちに比べ,総じてスポーツを行うことが少なく,行うスポーツのバリエーションも乏しい。WHOの身体活動の推奨値は,障害の有無に関わらず同じであることから,スポーツ参加はもちろん日常生活全般の身体活動促進に取り組む必要がある。