著者
渡辺 政俊 大畠 誠一
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.9-16, 1980-01-25
被引用文献数
3

地上部の樹形に関する理論的研究は, パイプ・モデル理論, 靜力学モデル, 吉良・小川の理論によって, 一連の定量的解析がなされた。竹稈は中空部分を内在し, しかも肥大生長を伴わない。このため, 竹稈には特有の形態的特徴が存在する。この特徴を明らかにするため, 竹稈の形と上記のモデルとを比較検討した。厳密な意味では, パイプ・モデル理論によりマダケ竹稈の形の説明はできない。しかし, 使いふるされたパイプが蓄積してできあがる直稈部分, 根株部分の形は, 静力学モデルと吉良・小川の理論にみごとにあてはまる。肥大生長をしない竹稈は古いパイプの蓄積を伴わないにもかかわらず, 両モデルがあてはまる事実は, 竹類の生長の重要な性質を示している。竹類では, 葉と連結すべきパイプが, 新竹の完成時点ですでに準備されていると考えると, パイプ・モデル理論に対するマダケ竹稈の形が示した矛盾は消える。竹類の生長の特徴から, 中空部分を除いたマダケ竹稈の形は常に相似形になる。