著者
角田 明良 安井 昭 西田 佳昭 熊谷 一秀 渡辺 敢仁 増尾 光樹
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.14-18, 1988

過去4年6カ月間に当施設において,大腸多発癌症例を5例経験したので,臨床病理学的に検討し,文献的考察を加えた.<BR>癌巣数は,癌巣を2個有するものは2例,3個以上有するものが3例に認められ,占居部位は大腸全域に分布していた.全例に腺腫性ポリープの合併を認め,全ポリープ数13個のうち6個に癌巣の併存を認めた.壁深達度は第1癌はpm以上の進行癌であり,第3癌以後は早期癌の頻度が高く,とくにm癌が多かった,他臓器重複癌の合併は2例にみられ,重複癌臓器は共に胃癌である.同・異時性大腸多発癌例には癌家族歴が認められた.<BR>大腸多発癌は,進行癌の口側に存在する早期癌の場合,術前検査での診断は困難となるため,手術に際しての術中内視鏡が有用であり,ポリペクトミーによる迅速診断が術式の決定に有効であった.