著者
渡辺 桂子 長嶋 祐二
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J99-D, no.1, pp.76-89, 2016-01-01

本論文では,医療用手話単語のデータベースの構築について述べる.手話通訳が必要とされる場面の一つに医療現場がある.医療用の手話単語は既に検討されているが,同じ意味の単語であっても書籍によって表現が異なっている,一般的に普及していない手話表現が多数存在している,手話単語の造語に統一性がないなどの問題点があり,手話表現が一般的に普及していない.著者らは,既存の手話単語の問題点を分析し,よりわかりやすい医療用手話表現を検討した.手話表現のわかりやすさを考慮し,動作の一貫性や表現の統一に注意して手話表現の検討を重ねた結果,1324単語の造語及び既存動作からの作成を行った.作成された手話表現は,全て3次元動作の収録を行い,アニメーション再生できるようになっている.3次元データで保存されているため,未登録単語があった場合,アニメーションの形態素合成で補えるようになっている.また,既存の手話表現とデータベースの手話表現の差異を形態素数を用いて検証した.その結果,手話表現の一致度は少なかった.これは,医療用の手話単語は既存の単語だけなく,部位や形状を用いて,わかりやすくしたためである.