著者
鈴木 啓助 渡辺 泰徳
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.295-301, 1996-07-15 (Released:2010-02-05)
参考文献数
9

林冠環境の異なる3地点(コナラ林,アカマツ林,林外)において,積雪中の化学物質濃度および生物量の変化を調べた.積雪中の陰イオン濃度は,アカマツ林内でコナラ林内および林外よりも高くなっている.各地点とも積雪中のCl-,NO3-,SO42-濃度は,融雪の進行によって低下する.しかしながら,積雪中のPO43-濃度は,いずれの地点でも融雪最盛期に増加する.その濃度が,アカマツ林内とコナラ林内で林外よりも高いことから,積雪中のPO43-は有機物の二次生成物と考えられる.顕微鏡観察によると,林内の積雪中には細菌・カビ・藻類の存在が認められるが,積雪初期には低密度で,融雪最盛期に増加する.積雪中のクロロフィルaとフェオフィチンaの濃度は,アカマツ林内においてコナラ林,林外よりも高い.また,アカマツ林内およびコナラ林内のクロロフィルa濃度は,融雪最盛期に増加し,藻類が増加することを示している.積雪中のバクテリア数は,アカマツ林内>コナラ林内>林外の順であり,融雪最盛期に多くなる.積雪融解試料による培養実験の結果,アカマツ林内の試料を明所に置いた場合のみ,NO3-濃度が減少し,25日目以降NO3-が検出されない.積雪融解試料に緑藻を添加した培養実験では,アカマツ林内の試料で,2週間でクロロフィルaとして14.7μg/lの緑藻が増加した.この結果から窒素の消費量を見積もると,藻類の増加によって積雪中からNとして220μg/lが消費されたことになる.
著者
程木 義邦 渡辺 泰徳
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.27-37, 1998-03-01 (Released:2009-06-12)
参考文献数
23
被引用文献数
3 10

5つの湖沼の22定点において水中の太陽紫外線の消散過程とその要因を調べた。測定を行った全ての水域において,太陽放射は水深とともにほぼ対数的に減衰し,UVB(280-315nm),UVA(320-400nm),光合成有効波長(400-700nm)の順で強く減衰された。太陽放射の減衰の程度は水域により大幅に異なり,UVBの水面での放射量に対して1%となる水深(Z1%)は,富栄養水域で0.3から1m,貧から中栄養で2m以上であった。また,UVBとUVAのZ1%はそれぞれ透明度の0.5倍,0.9倍であった。UVBとUVAの消散係数(m -1)は,湖水中のクロロフィルおよび懸濁態有機炭素濃度と強い正の相関を示し,溶存有機炭素濃度と弱い相関を示した。これ迄の報告では,水中紫外線の消散要因として溶存有機物による吸収が強調されていたが,植物プランクトン量が多くDOC濃度が低い水域では,植物プランクトンが水中紫外線の主な消散要因となることが推測された。