著者
川村 雅文 渡辺 真純 橋詰 寿律 加藤 良一 菊池 功次 小林 絋一 石原 恒夫 堀 進吾 相川 直樹
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.88-92, 1990-01-25 (Released:2016-10-01)
被引用文献数
1

症例は65歳の男性で, 焼いた餅を食べていてその小片を誤嚥した。その後徐々に呼吸困難が出現してきたため, 誤嚥から約1時間後に当院救急部に収容された。来院時の血液ガスは室内気でPaO_2 34Torr, PaCO_2 52Torrで著しいチアノーゼと努力性の呼吸を認めたが咽頭, 喉頭には餅を認めなかった。人工呼吸器を装着し, FiO_2 1.0としても, PaO_2は73Torrにしか上昇しなかった。人工呼吸器装着下に気管支鏡を施行したところ右下葉支に餅が嵌入していた。鉗子で餅を摘除すると人工呼吸器装着下FiO_2 1.0でPaO_2は369Torrと著明に改善した。患者は20歳時に左肺結核に罹患しており, 退院一か月後に行った肺シンチグラフィーでは左肺に換気, 血流とも認めなかった。このため右下葉支の閉塞だけで著しい呼吸困難に陥ったものと考えられた。
著者
渡辺 真純 神山 育男 神谷 一徳 佐和 貞治 仲村 秀俊 石坂 彰敏 小林 紘一
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.28, no.8, pp.592-596, 2006
参考文献数
17
被引用文献数
1

目的.気管支鏡下に低侵襲で特定領域の気道上皮被覆液(ELF)を採取できるマイクロサンプリング(BMS)法を関発し急性肺損傷,肺癌などの診断に応用している.BMS法により採取したELFがプロテオーム解析可能か検討した.方法.BMSプローブは先端に吸湿性チップのついた内筒カテーテルと外筒からなり,気管支鏡チャンネルを通じてELFを採取できる.ELF 2μlからプロテインテップシステム^<TM>(サイファージェン・バイオシステムズ)を用いてパルスレーザー照射による質量分析を行った.1)ラットLPS肺損傷モデルでのELFの経時的解析および2)原発性肺癌症例での腫瘍周囲ELFの解析を行った.結果.1)LPS投与後ラットのプロテオーム解析では31000,47000,63000 Da付近に再現性のあるピークが確認された.TNF-α antagonist 投与では上記のピークは消失または減少した.protein bankの検索からこれらピークはTNF-α関連物質などである可能性が示唆されている.2)腺癌症例の解析で腫瘍側ELFで3460,9280,20800 Da付近および5230 Da付近に健常側では認められないピークを認めた.まとめ.BMS法によるELF検体のプロテーオム解析が可能なことが判明した.各種肺疾患ELF中の網羅的蛋白解析が病態解明につながると考えられた.(気管支学.2006;28:592-596)