著者
渡辺 真純 神山 育男 神谷 一徳 佐和 貞治 仲村 秀俊 石坂 彰敏 小林 紘一
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.28, no.8, pp.592-596, 2006
参考文献数
17
被引用文献数
1

目的.気管支鏡下に低侵襲で特定領域の気道上皮被覆液(ELF)を採取できるマイクロサンプリング(BMS)法を関発し急性肺損傷,肺癌などの診断に応用している.BMS法により採取したELFがプロテオーム解析可能か検討した.方法.BMSプローブは先端に吸湿性チップのついた内筒カテーテルと外筒からなり,気管支鏡チャンネルを通じてELFを採取できる.ELF 2μlからプロテインテップシステム^<TM>(サイファージェン・バイオシステムズ)を用いてパルスレーザー照射による質量分析を行った.1)ラットLPS肺損傷モデルでのELFの経時的解析および2)原発性肺癌症例での腫瘍周囲ELFの解析を行った.結果.1)LPS投与後ラットのプロテオーム解析では31000,47000,63000 Da付近に再現性のあるピークが確認された.TNF-α antagonist 投与では上記のピークは消失または減少した.protein bankの検索からこれらピークはTNF-α関連物質などである可能性が示唆されている.2)腺癌症例の解析で腫瘍側ELFで3460,9280,20800 Da付近および5230 Da付近に健常側では認められないピークを認めた.まとめ.BMS法によるELF検体のプロテーオム解析が可能なことが判明した.各種肺疾患ELF中の網羅的蛋白解析が病態解明につながると考えられた.(気管支学.2006;28:592-596)