- 著者
-
中野 有加
渡邉 慎一
岡野 邦夫
巽 二郎
- 出版者
- THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
- 雑誌
- 園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
- 巻号頁・発行日
- vol.71, no.5, pp.683-690, 2002-09-15 (Released:2008-01-31)
- 参考文献数
- 21
- 被引用文献数
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湿気中根を形成する保水シート耕(WSC区)と水中根を形成する湛液水耕(DFT区)において, 人工気象室内で生育温度条件を15℃, 25℃および35℃の3段階に変えてトマトを栽培し, 根の生理活性や根系形態を比較することにより湿気中根と水中根の温度適応性の違いを検討した.DFT区における液中溶存酸素濃度は飽和量の93%以上で推移した.トマト植物体の生長は, 全ての温度条件下において, WSC区でDFT区より旺盛であった.根系当たりの出液速度は15℃区と35℃区ではWSC区でDFT区より大きかったが, 根乾物重当たりの呼吸速度は常にDFT区でWSC区より大きかった.根系形態は25℃区では両方式で差異はなかったが, 15℃および35℃区ではWSC区でDFT区より側根長および根投影面積が大きかった.また, フラクタル次元は15℃ではWSC区でDFT区より大きく, 根系がより複雑に発達したことを示した.これらの結果から, 湿気中根は水中根に比べて温度適応性に優れ, 不適温度条件下においても根系の拡大・発達と生理活性を維持できるため, 地上部生長の抑制が水中根と比較して小さかったものと考えられる.