著者
山本 弘信 八月朔 日猛 渡邉 敏行 宮田 清蔵
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1990, no.7, pp.789-796, 1990-07-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
15
被引用文献数
3

著者らは超分子分極率βの大きな分子が非中心対称構造をとりやすく,バルク位相整合のために最適な配向をするような分子設計法について検討した。種々のアニリン誘導体2分子をメチレン基により結合したメタンジアミン分子は,半経験的分子軌道計算MOPACAM1法によりΛ型配座をとることが予測された。Λ 型分子は,一方向にスタッキソグして結晶化しやすいために非中心対称構造をとりやすいと考えられる。合成したメタンジアミン誘導体はすべてSHG活性であった。結晶構造解析の結果から,メタンジアミン分子は。Λ型配座をとり,結晶中でΛ が一方向にスタッキングしており,分子の極性軸は100%配向していることがわかった。この構造は,原料のアニリン2分子がバルク位相整合のために最適な配向をした状態に近いので,有効なβテンソル成分をバルク位相整合に最大限に利用することができると考えられる。その結果,二次の非線形光学定数dのうちバルク位相整合可能な非対角テンソルが最大となることが予想される。この分子設計法により,非常に高い確率でSHG活性物質を合成することができた。
著者
渡邉 敏行
出版者
東京農工大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

二次の非線形光学材料を用いて効率よく第二高調波を発生させるためには位相整合条件を満たさなければならない。位相整合法にはバルクによるものと導波路を利用したものがある。非線形光学高分子はこれまで導波路を用いた位相整合法のみが研究されてきた。高分子は延伸、ポーリングにより屈折率を変化させることが可能である。その屈折率を制御することができれば任意の波長において非臨界位相整合をとることができる。本研究の目的は非線形光学高分子の各誘電主軸の屈折率制御とその屈折率制御を利用したバルク位相整合SHGの実証である。本実験で用いたポリウレアは縮重合により合成した。このポリウレアは主鎖にベンゼン環が入っており、分子鎖方向の分極率が最も大きくなると考えられる。キャスト法により作製した膜を異なる倍率で延伸した後、172℃(Tg=175℃)、8KVでコロナポーリングを行った。m-ライン法により各延伸倍率の屈折率の測定を行い、メーカ・フリンジ法により波長(1064nm)の非線形光学定数を求めた。1.7倍延伸ポーリングした膜の非線形光学定数はd_<11>=1.4、d_<13>=0.6、d_<12>=0.2pm/Vとなった。d_<13>≠d_<12>となるのは延伸、ポーリングすることにより点群mm2の対称性を持つようになるからだと考えられる。この高分子の二次の非線形特性は尿素基に由来するものである。尿素の非線形光学感受率はβ_<xzz>>β_<xyy>≒0となっており、延伸とポーリングにより膜のd_<13>に対してβ_<xzz>が有効に作用するようになりd_<13>>d_<12>になると考えられる。1.7倍延伸した試料の位相整合特性を調べた所、θ=90、φ=49.2において高分子材料では初めてバルク状態で位相整合が達成されていることが確認できた。