著者
渡邊 さつき
出版者
一般社団法人 日本臨床神経生理学会
雑誌
臨床神経生理学 (ISSN:13457101)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.591-594, 2018-12-01 (Released:2018-12-06)
参考文献数
9

てんかん学において「意識」は重要である。2017年に発表された国際抗てんかん連盟による新しいてんかん発作分類では, 意識を表す用語が“consciousness”から“awareness”に変更された。非けいれん性てんかん重積状態は, 患者によって様々な意識障害や認知機能障害がみられ, 幅広い臨床症状を呈する。このことから, 「意識」は様々な脳機能の集合として捉えるべきであると考える。近年EEG-fMRI研究により, Default Mode Network (DMN) と呼ばれる安静時に活動する脳領域が, てんかん性異常波が出現する際には活動が低下していることが明らかになった。DMNの各サブユニットは異なる機能的役割があることから, てんかん発作時の意識にはDMNが関与していることが示唆される。てんかん学は学際的領域であり, 神経生理学的視点を通して脳機能に迫るひとつのきっかけになるかもしれない。
著者
河野 仁 渡邊 さつき 岩井 恒敬
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.589-600, 2010-08-31

大気拡散予測に必要な都市下層大気の安定度を得るため,姫路市街地で高さ72mのタワーを使って気温の鉛直分布を1年間測定した.これと並行して建物の屋上で表面温度を測定した.また,夏と秋に各1日,係留気球を使い,地上から270mの高さまで気温を測定した.その結果,次のことがわかった.昼間,下層大気の温位勾配は不安定となり,高さ18mと70mの間の温位減率は夏に大きく,強不安定となり,冬にはやや小さくなる.夜間,地上から建物高さの2〜3倍までの温位勾配は中立に近くなる.この中立層の成因には,ラフネスサブレーヤに生じる強いメカニカル乱流が作用していると考えられる.また,夏の夜間は建物屋上表面温度が気温よりも高い状態が明け方まで持続しており,これも明け方まで中立か弱い不安定状態が残っている原因と考えられる.都市上空に存在する夜間の安定層は年間を通して出現し,安定層の温位勾配は冬季に大きい.その底面高度は建物高さの2〜3倍付近にある.下層大気の2高度(地上18mと70m)の温位差とバルク式表現である建物屋上表面温度と基準高さ(地面からの高さ18m)の温位差に関して,不安定から中立大気状態にかけて高い相関が得られた.この結果は下層大気の安定度の推定に利用できると考えられる.