著者
渡邊 正行 宮本 真理 橋場 炎 中島 肇
出版者
日本酪農科学会
雑誌
ミルクサイエンス (ISSN:13430289)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.25-34, 2015

組織には,その後の組織のありかたを方向付ける開祖と呼ばれる人物が存在することがある。雪印乳業(株)(現,雪印メグミルク(株))の乳酸菌研究の開祖は,北海道大学農学部応用菌学教室二代目の佐々木酉二教授であると言って良いだろう。佐々木名誉教授は,雪印乳業(株)の前身である北海道製酪組合連合会に勤務していた1935年に北海道月形集乳場の生クリームから「ブルガリア乳酸桿菌(L. bulgaricus)」を分離し,この菌株を使った乳酸菌飲料を開発した。この製品は北海道製酪組合連合会を通じて製造販売されたのである。佐々木名誉教授は,北海道大学で学術研究に従事した後も,様々な形で北海道製絡組合連合会や雪印乳業(株)の乳酸菌研究に多大な影響を与えた文字通りの開祖である。佐々木名誉教授が分離した菌株は,後述するように,乳酸菌の命名法の変遷に伴いL. helveticus Lj-1株という菌種菌株名で現在でも使用されている。北海道限定ではあるが,雪印メグミルク(株)で製造販売されている乳酸菌飲料「カツゲン(現在は,ソフトカツゲンという名称で販売)」は,このL. helveticus Lj-1株を使用した製品の一つである。